研究課題/領域番号 |
16H02083
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中嶋 直敏 九州大学, カーボンニュートラルエネルギー国際研究所, 特任教授 (80136530)
|
研究分担者 |
白木 智丈 九州大学, 工学研究院, 助教 (10508089)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カーボンナノチューブ / 燃料電池 / ナノ材料 / 半導体性SWNTと金属性SWNT分離 / 非白金型燃料電池触媒 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブ(CMT)は、溶媒に不溶であるが、本研究者は、世界先駆けて「可溶化CNT」のコンセプトを提案、推進してきた。この溶解CNTを用いることでCNTの極限的な物性(強度、電気伝導度など)を最大限に引き出した材料がデザイン・構築・展開できる。本研究では、課題1(次世代のエコエネルギー社会が求めるイモータル(不死身)燃料電池触媒の創成)および、課題2(簡便かつ超高効率での半導体性単層カーボンナノチューブ(SWNT)と金属性SWNTの分離法開発;これらは、次世代エレクトロニクス、エネルギー、環境分野における革新的エコ素材となる)の2つの課題に焦点を当てて、研究を推進してきた。 これまでこの研究は、概ね、予想、あるいはやや予想を超えた成果を出している。すなわち、課題1では、多層カーボンナノチューブを素材とする超高耐久性の燃料電池触媒の作製に成功し、そのメカニズムを明らかにしてきている。また、安価な非白金型燃料電池触媒の開発研究でも、成果を挙げ、成果は、著名な国際学術雑誌に掲載された。課題2でも、フラビン類縁体を用いた半導体性SWNTと金属性SWNT分離のメカニズムの解明を進め、効率的な半導体性SWNTと金属性SWNT分離に対するフラビンの化学構造の重要性を見出している。具体的には、効率的な半導体性SWNTと金属性SWNT分離には、フラビン誘導体に水素結合部位、長鎖基、7-,8位の置換基が重要な役割を果たしていることが推定された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に記載する成果が得られ、これらは、研究が、順調に進行していることを示している。カーボンナノチューブ(CNT)は、溶媒に不溶であるが、本研究者は、世界先駆けて「可溶化CNT」のコンセプトを提案、推進してきた。この溶解CNTを用いることでCNTの極限的な物性(強度、電気伝導度など)を最大限に引き出した材料がデザイン・構築・展開できる。昨年度の成果を踏まえて、次の実験を行った。これらを成果の概要とともに記載する。課題1に対して、ポリベンズイミダゾールの化学修飾(グラフト化)による新しい電解質膜を合成し、その特性を調べた。得られた電解質膜の伝導度は、ナフィオン膜には及ばないが、100℃以上の高温では、燃料電池の電解質膜として使用できることがわかった。一方、非白金型燃料電池触媒の開発に関して、昨年度、フタロシアニン鉄(II)錯体担持CNT(合成条件を最適化)が、Pt/Cに匹敵あるは上回る4電子酸素還元能を示すことを見出した。今年度は、種々のナノカーボンを用いてフタロシアニン鉄(II)錯体担持触媒を作製し、ハーフセルでそれらの酸素還元能を測定し、合成の触媒間の性能の比較を行ったところ、ナノカーボンの比表面積が、酸素還元能と関係していることがわかった。また、昨年に続き、計算化学手法や、速度法、平衡論法を駆使して、フラビン類縁体を用いた半導体性SWNTと金属性SWNT分離のメカニズムの解明を進め、効率的な半導体性SWNTと金属性SWNT分離に対するフラビンの化学構造の重要性が見出された。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえて、次の実験を行なう。課題1に対して、カーボンナノチューブとの比較のため、安価なポリベンズイミダゾール被覆カーボンブラックを素材とした触媒を合成して、カーボンナノチューブの特徴をより明確にする。また、種々のスピネル金属/カーボンナノチューブハイブリッド触媒をデザイン、合成し、非白金型燃料電池触媒の開発に関する研究をさらに推進する。これまでにフタロシアニン鉄(II)錯体担持CNT(合成条件を最適化)がPt/Cに匹敵あるは上回る4電子酸素還元能を示すことを見出した。今年度は、特殊構造を持つカーボンブラックを素材としたフタロシアニン鉄(II)錯体担持触媒を作製し、ハーフセルでそれらの酸素還元能を測定し、合成の触媒間の性能の比較を行なう。また、これらの触媒を用いて、単セル系での燃料電池触媒機能を測定する。一方、昨年に続き、計算化学手法や、速度論法、平衡論法を駆使して、半導体性SWNTと金属性SWNT分離のメカニズムをより詳細に検証する。(7)-1置換型長鎖フラビン誘導体を合成し、これを用いて、半導体/金属性単層カーボンナノチューブの分離を検討し、これまでの(7,8)-2置換型長鎖フラビン誘導体との比較を行い、半導体性SWNTと金属性SWNT分離に対するフラビン化学構造依存性をさらに精査する。
|