研究課題/領域番号 |
16H02085
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
湯田坂 雅子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 招聘研究員 (70159226)
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研究分担者 |
片浦 弘道 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 首席研究員 (30194757)
佐伯 久美子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 疾患制御部, 幹細胞試料開発研究室長 (80322717)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / イメージング / バイオ応用 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)による褐色脂肪組織(BAT)造影の基礎を構築し、BAT造影剤として動物実験レベルでの実用化に向けた研究を加速させるために、CNTがBATに集積するメカニズムを明らかにした。2016年度研究では、CNTの表面をpoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine-co-n-butyl methacrylate (PMB)という生体親和性の高いポリマーで被覆(PMB-CNT)して用いた。金属やプラスチックの表面をPMBで被覆すると、生体分子との相互作用が軽減され、炎症反応や免疫応答を惹起することがほとんどないと報告されている。PMB-CNTの場合も、疎水性のブチル基がCNTに吸着し、表面には親水性基が多数露出することで、PMB-CNTの生体親和性が高くなっていると考えられる。PMB-CNTをマウスに経尾静脈投与し、近赤外(NIR)カメラにより全身撮影を行ったところ、脂肪組織が再現性よく造影された。また、脂肪組織におけるCNT発光強度からCNT量はBAT:白色脂肪組織(WAT)~20:1であることがわかり、PMB-CNTがBAT優先的に集積することを示していた。NIR蛍光顕微鏡によるBATを観察から、CNTはBATやWATの毛細血管の内皮細胞内にいると推定された。この推定が妥当であることを血管内皮細胞の免疫染色、および透過電子顕微鏡観察により確認した。また、Western BlottingなどによりPMB-CNTがマウス血清中のApoB、ApoE, ApoCを特異吸着することも確認された。従って、PMB-CNTが脂肪組織の毛細血管内皮細胞内に集積するのは、血中でアポリポンパクがPMB-CNTに吸着し、そのアポリポタンパクが脂肪組織毛細血管内皮細胞に発現している受容体に捕らえられるためと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNTによる褐色脂肪組織(BAT)造影の基礎を構築し、BATやベージュ細胞組織の造影剤として動物実験レベルでの実用化に向けた研究を加速させるために、2016年度研究ではCNTがBATやベージュ組織を再現性よく造影できることを確認し、CNTが脂肪組織に集積するメカニズムを明らかにすることを目標にしていた。当初のこの目標をおおむね達成し、メカニズム解明に成功した。BAT、ベージュ脂肪組織、白色脂肪組織の分別については、CNTの表面をpoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine-co-n-butyl methacrylate (PMB)という生体親和性の高いポリマーで被覆(PMB-CNT)した際には、CNT発光強度の違いにより分別可能であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
CNTによる褐色脂肪組織(BAT)造影の基礎を構築し、BATやベージュ細胞組織の造影剤として動物実験レベルでの実用化に向けた研究を加速させるために、2017年度の研究では褐色脂肪組織(BAT)、白色脂肪組織(WAT)、ベージュ細胞含有WATの分別造影の精度の向上を試みる。すでに、表面被覆物質に適切なものを選択することで分別造影精度が上がるという結果を得ているので、その再現性を確認し、また、分別造影が可能となるメカニズムを明らかにする。マウス実験により推定されたメカニズムを細胞実験により確認し、詳細を解明する。さらに、CNTのBAT/Beigeへの集積による熱産生機能への影響、およびマウス全身に及ぼす影響などについてマウス実験を行い検討する。
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