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2017 年度 実績報告書

カーボンナノチューブによる褐色脂肪組織の近赤外光造影

研究課題

研究課題/領域番号 16H02085
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

湯田坂 雅子  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 招聘研究員 (70159226)

研究分担者 片浦 弘道  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 首席研究員 (30194757)
佐伯 久美子  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 疾患制御部, 幹細胞試料開発研究室長 (80322717)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード褐色脂肪組織 / カーボンナノチューブ / イメージング
研究実績の概要

熱を産生する褐色脂肪細胞組織(brown adipose tissue; BAT)は、近年メタボリックシンドロームの新規予防や治療法の開発ための標的組織として注目されている。しかし、開発において必須であるBATをin vivoで可視化する簡便な方法がない。申請者らは、単層カーボンナノチューブ(CNT)がマウス体内において褐色脂肪組織(BAT)に選択的に集積し、CNTの生体透過性の良い近赤外発光を用いた造影により非侵襲的にBATを造影できることを発見した。28年度の実験では、PMBにより表面被覆したCNT(PMB-CNT)が、BAT優先的に蓄積し、熱を産生しない白色脂肪組織(WAT)にはその10%以下しか蓄積しないことと、その蓄積メカニズムが血中のアポリポプロテインがPMB-CNT に移行するためであることを明らかにした。29年度の研究では、リン脂質PEGで被覆したCNT(PLPEG-CNT)を用いると、蓄積箇所の選択性が増し、ほぼBATだけに集積し、しかも、集積量はマウスが絶食状態にあると数倍に増加することが判明した。絶食状態下、BATへのPLPEG-CNT集積が増加するメカニズムを解明するために、組織観察したところ、絶食状態においてはBATの血管からのPLPEG-CNTが漏出していたことをつきとめた。この現象は、見方を変えると、PLPEG-CNTを用いたことで、絶食によりBATの血管漏出性が亢進することを可視化できたとことになり、PLPEG-CNT造影剤としての用途が広がると考えられる。PMB-CNT毒性試験をマウスを使って行った結果、28年度に行ったPLPEG-CNTと同様、毒性兆候はみられず、造影剤として適していることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画に従い28及び29年度は順調に研究を進めることができた。CNTを用いた褐色脂肪組織(BAT)選択的造影が可能なこと、および、CNTがBATに蓄積するメカニズムも明らかにすることができた。CNT被服剤として、PMBとPLPEGの2種類を検討した結果、どちらも、BAT選択的造影が可能であった。PMB-CNTを静脈投与すると、血中のアポリポプロテインがPMB-CNTに移行し、アポリポプロテイン受容体を持つ褐色脂肪組織の毛細血管内皮細胞に捕らえられ、細胞内に取り込まれることで、PMB-CNTがBATに蓄積しやすいことを明らかにした。PLPEG-CNTでは、PMB-CNTに見られた血中のアポリポプロテインのなどの成分移行は少なく、そのまま、血液とともにマウス体内を循環する傾向があるが、マウスを絶食状態にすると、PLPEG-CNTのBATへの蓄積が増加することを見出した。この現象は当初の予期していなかったものであるが、検討する必要があると判断し、この件に関して29年度は詳細に検討した。近赤外蛍光顕微鏡や透過電子顕微鏡をつかって、CNT蛍光が組織のどこに存在しているかを調べた結果、これまで知られていなかった「絶食によるBAT血管漏洩亢進」が原因であることを明らかにすることができた。この結果は、絶食という身体的ストレスに際してBATがどのように応答しているかを解明するのに役立つ結果であり、今後、さらに詳細なメカニズム検討が必要である。
CNT構造の影響に関しても研究を進め、孤立分散状態が実現しているかどうかが造影剤の機能発揮に重要な因子であることを明らかにした。

今後の研究の推進方策

30年度は、当初の予定に従い、動物種によるCNTの脂肪組織造影がどの程度影響を受けるか、PMB-CNTやPLPEG-CNTがBATに蓄積したことで、BATの機能が変化するかどうかを調べる。
当初予定していた上記研究に加えて、絶食によるPLPEG-CNTの蓄積亢進に対して、メカニズムを詳細に検討することとし、絶食後にBATにみられた血管透過性亢進が、同じく絶食のBATで顕著であった細胞間結合やコラーゲン繊維の乱れとどのように関連しているのかを調べる。また、絶食以外に、寒冷刺激や腫瘍などにより身体的状況が変化した際に、PMB-CNTやPLPEG-CNTのBATへの蓄積がどのように変化するかを調べて、身体的状況に対するBATの応答を探索する。
PLPEG-CNTによるマウスBAT造影をはじめ、得られた成果を学会発表や論文発表により公表する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Quantification of Single-Walled Carbon Nanotubes in Mouse Feces: Phantom Experiments2018

    • 著者名/発表者名
      Mitsuko Takahashi, Yuko Okamatsu-Ogura, Takeshi Tanaka, Hiromichi Kataura, Masako Yudasaka
    • 学会等名
      フラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会,第54回シンポジウム
  • [学会発表] Near-Infrared Photoluminescent Carbon Nanotubes for Imaging of Brown Fat2017

    • 著者名/発表者名
      Masako Yudasaka, Yohei Yomogida, Minfang Zhang, Takeshi Tanaka, Masako Nakahara, Norihiko Kobayashi, Yuko Okamatsu-Ogura, Ken Machida, Kazuhiko Ishihara, Kumiko Saeki, Hiromichi Kataura
    • 学会等名
      フラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会,第53回シンポジウム
  • [学会発表] Near-Infrared Photoluminescent Carbon Nanotubes for Imaging of Brown Fat2017

    • 著者名/発表者名
      Masako Yudasaka, Yohei Yomogida, Minfang Zhang, Takeshi Tanaka, Masako Nakahara, Norihiko Kobayashi, Yuko Okamatsu-Ogura, Ken Machida, Kazuhiko Ishihara, Kumiko Saeki, Hiromichi Kataura
    • 学会等名
      第7回ナノカーボンバイオサテライト
  • [学会発表] Near-Infrared Photoluminescent Carbon Nanotubes for Imaging of Brown Fat2017

    • 著者名/発表者名
      Masako Yudasaka, Yohei Yomogida, Minfang Zhang, Takeshi Tanaka, Masako Nakahara, Norihiko Kobayashi, Yuko Okamatsu-Ogura, Ken Machida, Kazuhiko Ishihara, Kumiko Saeki, Hiromichi Kataura
    • 学会等名
      11th International Sympoisum of Nanomedicine
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 日経バイオテク、バイオイメージング最前線、「カーボンナノチューブで褐色脂肪を近赤外光撮影」 「2017

    • 著者名/発表者名
      湯田坂雅子、佐伯久美子
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      日経BP社

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公開日: 2019-03-07  

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