研究課題
エネルギー生産可能な人工細胞を目指して、光依存的なATP生産システムの構築を行った。光照射に依存してプロトン勾配を形成するバクテリオロドプシンと、プロトン勾配によりADPをATPに変換するATP合成酵素とを、脂質二重膜に組み込んだプロテオリポソームを作製した。両タンパク質の調製については、バクテリオロドプシンでは好塩菌の大量発現株を用いて、またATP合成酵素については大腸菌の発現系で、発現させ大量に精製した。この両者をソイビーンの脂質で作製したリポソーム(SUV)に再構成したところ、光依存的にATPの生産が可能な人工光合成細胞の作製に成功した。アジドを添加により、ATP合成酵素の逆反応(ATP加水分解反応)を抑制することで、mM濃度のATP合成系を可能とした。さらにこのSUVを人工脂質を用いたGUV中に組み込むことに成功して、あたかも細胞小器官のような構造を持たせることに成功した。リボソームの再構成については、大腸菌の50Sリボソームの全リボソームタンパク質の発現と精製を完了した。特に、不溶性であったL4,L20について、調製時の工夫により、その凝集を大幅に抑制することが可能であることが示された。L4.L20については、光ピンセットにより23SrRNAまたは5’RNA断片との相互作用解析を進めた。また、30Sサブユニットについては、rRNAの転写とリボソームタンパクがカップルしてアセンブリーするシステムを構築することに成功した。また、大腸菌の16SrRNAの修飾酵素の精製はすべて完了し、メチル化酵素についてはその活性を確認した。またtRNAの修飾酵素については、t6Aの修飾酵素を精製し、tRNAのアンチコドンの3‘側(37位)に存在するt6Aの翻訳への影響の評価系を構築した。
3: やや遅れている
バクテリオロドプシンの調製が不十分なために、若干進捗が遅れていたが、好塩菌の発現株をドイツマックスプランク生化学研究所から入手し、大量調製法を確立したために、最終的には遅れは十分に取り戻せる予定である。
当初の目標であった、リボソームの再構成および人工光合成細胞の完成に到達できる予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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