PURE systemの再生産のためには、タンパク質合成系の反応場であるリボソームを、合成するシステムの開発が必須である。まず、リボソームタンパク質とリボソームRNAからの生理的条件下でのリボソーム再構成系を構築した。大腸菌の30Sと50Sのサブユニットの全リボソームタンパク質を個別に発現させ精製を行い、これらのリボソームタンパク質とrRNAから、タンパク質合成活性を有する30Sサブユニット、50Sサブユニットの再構成に成功した。また、rRNAの転写、リボソームRNAの翻訳と共訳したアセンブリー系の構築を行った。 エネルギーの生産系の構築については、バクテリオロドプシン(bR)が光照射によりプロトン濃度勾配を形成することに着目し、bRとATP合成酵素をリポソーム(SUV)上で組み合わせることで、光によってATPを合成する人工細胞小器官を作製した。SUVを人工脂質で作製しリポソーム小胞(GUV)に封入した人工光合成細胞を作製し、ATP合成酵素の逆反応であるATP加水分解をアジドにより阻害することで、光照射よりmMオーダーでADPをATPへと変換することに成功した。このシステムで合成したATPを、PURE systemの転写反応や翻訳反応に基質やエネルギーとして利用し、光依存的にタンパク質を合成する人工細胞を設計した。光合成したATPによる、mRNAを転写合成、アミノアシル化反応、翻訳のエネルギー源であるGTPを合成することに成功した。さらに、光合成されたATPによってbRまたはATP合成酵素を自己増殖することで、人工細胞小器官のATP合成が加速化するシステムを構築した。bRを光合成した場合は、ATP合成量が約1.5倍上昇、ATP合成酵素の膜部分(Fo)を光合成した場合は、約1.4倍上昇した。細胞と同様に正のフィードバック構造をもつ人工光合成細胞の構築に成功した。
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