研究実績の概要 |
本年度は、ナノワイヤを用いたがん特異的エクソソームの捕集デバイスの開発を行い、個々の技術の性能評価を行った。ナノワイヤを用いたがん特異的エクソソームの捕集は、作製したナノワイヤ構造体に蛍光標識化抗体(がん特異的表面分子を認識)を表面修飾することで達成した。この際には、作製したナノワイヤの配向性や直径、面方位などが抗体の表面修飾に及ぼす影響の評価を行った。また、生体分子分離用に既に開発したナノワイヤ構造体(ACS Nano, 2013, 7, 3029(IF=13); Sci. Rep. (Nat. Pub. Group), 2014, 4, 5252(IF=6); Sci. Rep. (Nat. Pub. Group), 2015, 5, 10584(IF=6))上に酸化グラフェンを吸着させることで、酸化グラフェンナノワイヤの作製に成功した。作製した酸化グラフェンナノワイヤの物性評価には、電子顕微鏡(SEM/STEM/TEM)法やX線回折法を用いた。その後、酸化グラフェンナノワイヤに蛍光標識化抗体の物理的修飾を行った。酸化グラフェンの特性(Small, 2012, 8, 977)により、修飾後に蛍光分子の蛍光強度が減少することが確認された。また、蛍光標識化抗体を酸化グラフェンナノワイヤから脱離することによって蛍光分子の蛍光強度が回復することも確認された。これら結果より、蛍光標識化抗体を用いて、蛍光のON/OFFの概念実証を行うことに成功した。さらに、酸化グラフェンナノワイヤに修飾した蛍光標識化抗体によるエクソソームの捕集と、抗体の脱離によるエクソソームの回収にも成功した。
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