研究課題
本年度は、縦型ナノポアと横型ナノポアであるナノポアチャネルによるエクソソームのサイズ解析と同時(蛍光・電流)計測を行った。縦型ナノポアを用いることで、がんによるエクソソームの分布サイズの平均値変化(がん: 58 nm; 正常:46 nm)の計測を実証した。透過型電子顕微鏡によって観察したがんによるエクソソームの分布サイズの平均値変化も同時に行い、ナノポア計測と透過型電子顕微鏡計測との相関が確認された。これらの得られた知見を基に、ナノポアチャネル(横型ナノポア)でも同様の計測結果が得られるかの実証を行った。ナノポアチャネルでエクソソームの蛍光計測を行うために十分な流路長を確保すると、長くなった流路長に応じてポア部分の抵抗値が上昇し、ナノ粒子による抵抗値の微小な変化量が読み取ることができなかったため、計測部はブリッジ回路を用いた電流計測系を開発した。ブリッジ回路では、釣り合いのとれた回路間において流れ込む電流値を計測するため、マイクロ流路によってナノ粒子を検出することが可能である。理論的・実験的検討の結果、大きな電圧を印加することによるS/N比の増強が可能であることが確認され、従来のポア感度(ポア体積/サンプル体積<100)を大幅に上昇させること(ポア感度/サンプル体積<10000)に成功した。最後に蛍光・電流計測の同時計測を実証した。従来の縦型ナノポアは蛍光計測と電流計測を同期させることは技術的に困難であったが、今回開発したナノポアチャネル(横型ナノポア)では蛍光・電流計測の同時計測が容易であることが確認され、ナノ粒子の同時計測を実証した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、当初計画していた縦型ナノポアと横型ナノポアであるナノポアチャネルによるエクソソームのサイズ解析を確認した。また、電流計測を同期させることは技術的に困難であるため、横型ナノポアであるナノポアチャネルによる蛍光・電流計測の同時計測の実証に成功している。さらに、ブリッジ回路では、釣り合いのとれた回路間において流れ込む電流値を計測するため、理論と実験の両面より、大きな電圧を印加することによるS/N比の増強が可能であることを実証しており、当初の計画以上に進展していると考えた。
今後は、多層グラフェンナノワイヤ上の量子ドット付き抗体によってエクソソームを捕集した後、電圧を印加してナノワイヤを加熱して量子ドット付き抗体を脱離することで、エクソソームの脱離を達成する。また、抗体がグラフェンより脱離することで、量子ドットの蛍光回復の確認も行う。ナノワイヤ加熱による物理的に吸着した抗体の脱離では、抗体を失活させることが無い加熱温度と加熱時間の条件検討を行う。加熱温度と加熱時間は、印加する電圧の大きさと電圧印加時間にて調整する。抗体を失活すること無く脱離ができた後には、エクソソームの表面分子に応じて抗体の種類を変える予定である。
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