研究課題/領域番号 |
16H02091
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
馬場 嘉信 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30183916)
|
研究分担者 |
龍崎 奏 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (60625333)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ナノバイオデバイス / エクソソーム / ナノワイヤ / ナノポア計測 / がん超早期診断・予防 |
研究実績の概要 |
本年度は、ナノワイヤ上にエクソソームを捕集した後、ナノワイヤへの様々な外部因子導入とエクソソーム脱離の相関解析を行い、エクソソーム脱離を達成した。外部因子としては、1. 電圧印加によるナノワイヤ加熱、2. 溶媒交換による溶液中のナノワイヤ表面状態変化、3. ナノワイヤ表面修飾と加熱・溶媒交換による修飾分子の脱離の3種類を試した。1の電圧印加によるナノワイヤ加熱では、電極表面にエクソソームが分散している溶媒が接触すると電気分解が生じ、ナノワイヤの加熱が十分でなくなることが明らかとなったために、電極表面が溶媒と接触しないような表面被膜技術の開発を行った。また、効率的なナノワイヤ加熱のために電極材料となる金属種の選定も行った。さらに、効率よくナノワイヤを加熱するために電極パターンの最適化を達成した。2の溶媒交換による溶液中のナノワイヤ表面状態変化では、陽イオン・陰イオンのイオン強度を段階的に変化させることで、脱離量を制御することに成功した。その際、流量も脱離に影響を及ぼすことが確認され、流量とイオン強度の制御により脱離量制御を達成した。3. ナノワイヤ表面修飾と加熱・溶媒交換による修飾分子の脱離では、表面修飾する分子の種類を段階的に変化させることで、どの分子が最も強く相互作用するかを明らかとした。また、pMAIRS計測を行うことで、その分子とナノワイヤとの結合様式を明らかにすることに成功した。明らかになった結合様式を基盤とし、溶媒交換によるエクソソームの効率的な脱離を達成した。これら1~3の脱離検討を行った後に、前年度までに達成したポアデバイスとナノワイヤデバイスとの集積化を行った。集積化したデバイスを用いて、エクソソーム捕捉→エクソソーム脱離→エクソソーム検出の1連の流れの検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初計画していたナノワイヤを用いたエクソソームの捕捉・脱離を完了すると共に、計画を前倒しにして、集積化デバイス作製まで着手した。エクソソームの捕捉・脱離においては、当初計画していた加熱による脱離のみならず、溶媒交換による脱離や、表面修飾と修飾分子の脱離の2つの脱離方法も検討することを達成した。さらに、脱離検討を行った後に、前年度までに達成したポアデバイスとナノワイヤデバイスとの集積化を行った。集積化したデバイスを用いて、エクソソーム捕捉→エクソソーム脱離→エクソソーム検出の1連の流れの検討を行った。これら進捗状況を鑑みると、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度までに研究開発した要素技術の集積化デバイスの試作を行い、臨床応用への展開を推進している。集積化デバイスを用いて、国立がん研究センター連携研究者や名古屋大学医学部の連携研究者などと協力し臨床応用を開始する。集積化デバイスにおいては、低侵襲性の診断法である「liquid biopsy」を可能にするため、さまざまな体液(血液・尿・唾液・涙)に含まれているエクソソームのサイズ、表面分子、あるいは内包されるmicroRNAの計測を進める。エクソソームの解析において、得られる定量・定性情報により、がんの種類(肺がん、乳がん、膵臓がん等)を同定し、得られる解析情報から、正常細胞由来かがん細胞由来かを判定することが可能となる。最終的には、100億個中のがん特異的エクソソーム解析を従来の数十倍以上の速度で実現し、がんの超早期診断・予防を達成する。
|