研究課題/領域番号 |
16H02093
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑野 博喜 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (50361118)
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研究分担者 |
大口 裕之 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (40570908)
LE VANMINH 東北大学, 工学研究科, 助教 (60765098)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 集束イオンビーム / MEMS / マルチ集束イオンビーム |
研究実績の概要 |
Siマイクロマシニングにより作製したエミッタアレイによりイオン液体電界放出型イオン源アレイを適用してSiエッチング特性を把握し、イオン液体イオン源によるSiエッチングメカニズム解明の予備的検討を行った。予備的検討によればイオンビームは中心部と周辺のはローブに分かれており、それぞれの表面状態が異なることがXPS分析から明らかになった。そのメカニズムは未だ明確では無く、今後そのメカニズムを明らかにする予定である。 電界シミュレーションによりイオンレンズを設計し、Siマイクロマシニングにより作製した。しかし、本レンズ系で集束効果の確認はまだ行っていない。レンズ系で最も困難な課題は、球面収差と色収差である。色収差は従来のGa集束イオンビームに比べ種々のイオン種が存在することから増大の可能性があるが、その他の収差はGa集束イオンビームと比べ、エミッタ先端半径、アパチャー半径、光源、レンズ・光源間距離などいずれも二桁以上小さく高精度に作製することにより、収差を抑圧できる可能性があるのでシミュレーションにより確認検討した。 作製したエミッタアレイから引き出したイオンビームのエネルギー分布を測定する装置を試作した。試作したエネルギー分布測定装置は、引き出したイオンビームを減速レンズによる減速電圧を走査し、ターゲットの到達するイオンビーム電流をそれぞれ計測するものである。本エネルギー分布測定装置では、イオンエネルギーが5kV程度まで測定することができ、エネルギー分解能として数10Vである。今後さらなるエネルギー分解能の向上を目指すべく検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り以下の検討項目を実施した。 1.電解研磨W線エミッタにイオン液体をイオン種源として用いる電界放出型イオン源とSiマイクロマシニングを用いて作製したエミッタにイオン液体をイオン種源とする電界放出型イオン源を試作し、液体金属Gaイオン源とも比較しつつ電流電圧特性等の基本特性を明らかにした。 2.Si基板上にマイクロマシニングにより25(5X5)個以上のエミッタアレイを同時作製し、イオン液体をイオン種源とした電界放出型イオン源アレイの基本構造を決定した。 3.Siマイクロマシニングにより作製した電界放出型イオン源アレイのイオンレンズ設計技術の確立を目的として、有限要素法を用いたシミュレーションを適用した。このシミュレーションに基づきSiマイクロマシニングによりイオンレンズアレイを試作した。 4.Siマイクロマシニングにより作製したエミッタアレイによりイオン液体電界放出型イオン源アレイを適用してSiエッチング特性を把握し、イオン液体イオン源によるSiエッチングメカニズム解明の予備的検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
製作したマルチ集束イオンビーム装置によりエッチング、表面修飾、イオン注入などの各種加工に対し特に、Siとイオン液体中の各種元素、特にF, Cl, Cなどに着目する。エッチングではF成分の多いイオン液体を用いる。最初にイオン液体としてEMI-BF4を用いたイオン液体イオン源と簡便な減速系レンズによりSi基板をエッチングし、AFM観察およびXPS観察を行う。エッチング痕を中心部とハロー部に分けて、イオンビーム集束部の中心部の20μm程度に絞られていることを確認し、スパッタ率をGaイオンビームと比較して求める。この過程において化学反応の効果を明らかにし、さらなるスパッタ率増大可能性を追究する。イオン打ち込み用にはPおよびBの入ったイオン液体を選択して検討する。 ビーム構成メカニズムおよびエッチングメカニズムの解明のためにビームそのものの解析を進める。このため、ビーム中のイオン種および中性分子種の同定を進めるとともにそれぞれのエネルギー分布の測定を進める。この解明にはイオン種の測定装置への取り込みなど測定上の困難性が予想されるが、臨機応変に装置構成の変更などを行い対応する。
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