研究課題
(1) III-V 族系スピン機能ヘテロ構造材料の開発: 1) GaMnAs/GaAs/GaMnAsからなる縦型スピンMOSFET構造を作製し、サイドゲートからのゲート電圧V_GSによるソース・ドレイン電流I_DSの変調と強磁性GaMnAsの磁化(平行/反平行)による大きなI_DSの変調を実現した。2) GaMnAsにテラヘルツハルス光を照射し、1ps以下の高速で磁化が変調できることを示した。(2)IV 族系スピン機能ヘテロ構造材料の開発とデバイス応用: 1) Fe/Mg/SiOxNy/Siからなるトンネル接合を作製し、薄いMg層の挿入がdead layerを抑制すること、シリコンCMOS技術と整合性の良いアモルファスSiOxNy層の挿入がSiへの高効率スピン注入・検出にとって有望であることを示した。2) Fe/Mg/MgO/SiOx/n+-Si(001)接合を形成し、界面でスピン散乱がほとんどない理想的なスピン注入効率を実現した。(3)狭ギャップ半導体スピン機能ヘテロ構造材料の開発とデバイス応用: 1) n型強磁性半導体(In,Fe)Sbを作製し、この材料ではキュリー温度T_Cが335 Kに達するを示した。さらに、これまでの実験結果をもとに、高いT_CをもつFe系強磁性半導体の統一的な設計指針を示した。 2) 室温で強磁性を示すp(Ga,Fe)Sbのバンド構造をMCDスペクトルにより調べ、禁制帯中に不純物バンド(IB)が存在しフェルミ準位EFがIB中にあることを示した。3) (Ga,Fe)Sbの室温強磁性共鳴を観測し、歪みによる磁気異方性の変化を定量的に明らかにした。(4)Co/Fe/GaOx/MgO/Feからなる縦型スピンMOSFET構造を作製し、サイドゲート電圧および磁化による電流の変調を示すことにより、室温におけるスピンMOSFETの動作を実証した。
1: 当初の計画以上に進展している
III-V族、IV族、および狭ギャップ強磁性半導体とそのヘテロ構造、およびデバイス応用の研究において、大きな成果と進展を得た。GaMnAs/GaAs/GaMnAsからなる縦型スピンMOSFET構造を作製し、スピンMOSFETとしての性能の実現と動作を低温で実証した。さらに、Co/Fe/GaOx/MgO/Feからなる縦型スピンMOSFET構造を作製し、サイドゲート電圧および磁化による電流の変調を示すことにより、室温におけるスピンMOSFETの動作を実証した。IV 族系スピン機能ヘテロ構造材料の開発とデバイス応用においても、強磁性体から半導体へのスピン注入、輸送、検出の理論を確立し、Fe/Mg/MgO/SiOx/Si接合を形成して界面でスピン散乱がほとんどない理想的なスピン注入効率を実現するなど、大きな進展を成し遂げた。さらに、狭ギャップ強磁性半導体の研究においても、n型とp型の両方で室温で強磁性を示す半導体(In,Fe)Sb、(Ga,Fe)Sbの作製に成功し、高いT_CをもつFe系強磁性半導体の統一的な設計指針を示した。これらは世界トップレベルの大きな成果であり、スピントロニクス分野の研究をリードしている。
それぞれの材料系において、さらなる高品質材料の作製(結晶成長条件の最適化)、強磁性発現機構の解明、高品質の超薄膜・ヘテロ接合の作製、強磁性トンネル接合やスピントランジスタなどスピントロニクスデバイスに向けた機能の発現と実証に向けた研究を進める。今後も、論文発表、国際会議、学会、シンポジウム、ワークショップ、研究会での発表を通じて、研究成果の積極的な発信と学術交流に努める。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 5件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (78件) (うち国際学会 32件、 招待講演 12件) 備考 (5件)
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