研究課題/領域番号 |
16H02105
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
吉本 昌広 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (20210776)
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研究分担者 |
西中 浩之 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (70754399)
上田 大助 京都工芸繊維大学, グリーンイノベーションセンター, 特任教授 (60540424)
石田 秀俊 京都工芸繊維大学, グリーンイノベーションセンター, シニア・フェロー (00572009)
山下 兼一 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (00346115)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 半導体 / 半金属 / 分子線エピタキシー / 結晶成長 / 半金属半導体合金 / レーザダイオード |
研究実績の概要 |
ビスマス含有半金属半導体混晶はGaAsやInP基板に格子整合しながら禁制帯幅が0.3から1.4 eVをカバーしたⅢ-Ⅴ族半導体である。この半導体は、Biの混入による大きなナローギャップ効果、禁制帯幅の温度無依存化、大きなスピン軌道相互作用などの特異な物性を示す。この混晶は非平衡状態でのみ製作できる結晶材料であるので、結晶材料でありながらその電子物性は、製作の方法と条件に依存している。真の物性は未だ明確ではない。本研究では、格子整合しながら高品位かつ高ビスマス組成のビスマス含有半金属半導体混晶を創製し、その真の物性を明確にし、その特性を活かしたフォトニックデバイスへの応用を切り開くことを目的としている。 平成28年度は以下の研究を進めた。 (1)ビスマス含有半金属半導体混晶およびデバイスの製作について:GaNAsBi混晶を分子線エピタキシー法で結晶成長するために、窒素プラズマセルと、デバイス作成のためのn形ドーパント用セルの準備を進めた。GaNAsBiフォトニックデバイスを試作する前段階として、GaAsBiレーザダイオードの試作と構造の最適化を進めた。当初目的とした発振しきい値の低減は得られなかった。GaAsBi成長層に問題があるのではなく、電流狭窄用の絶縁膜の製作方法に問題があると考えており、29年度に新たに使用可能となる化学気相堆積装置を用いて高品質の絶縁膜を得て、再度、しきい値の低減に取り組む。また、GaAsBiホトダイオードを製作し、所期の赤外感度特性を得た。 (2)GaAsBiの基礎物性の解明について:高速時間分解ホトルミネセンス特性により発光寿命の計測を開始した。また、GaAsBiホトダイオードを用いた分光感度測定による局在準位の評価を進めた。これらの特性のビスマス含有量依存性などを体系的なデータを取得し、基礎的な光物性を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではGaNAsBiの結晶成長を進める予定であったが、結晶成長の準備にとどまった点で遅れが出ている。これは、より単純な混晶であるGaAsBiの品質の到達点を見極めるために、GaAsBiレーザダイオードに注力していたためである。GaNAsBiの結晶成長そのものは、2003年に世界初として実現している。本研究では当時の結晶成長装置より格段に真空度が良い装置を用いて高品質化を目指しており、本年度十分、GaNAsBiの結晶成長が実施できると考えている。 GaAsBiの基礎物性の解明については、特に、研究グループ間で特性が揺らぐ主因と考えている局在準位の定量的な解明の糸口を得ており、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きGaNAsBiの結晶成長に取り組み、この点での遅れを取り戻す。また、順調に進めている局在準位の定量的な解明については引き続き注力する。レーザダイオードのしきい値低減については、29年度に新たに使用可能となる化学気相堆積装置を用いて高品質の絶縁膜を得て、再度、取り組む。
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備考 |
平成28年5月に本研究のこれまでの業績に対して応用物理学会 第10回(2016)フェロー表彰 「ビスマス系半金属半導体の高品質単結晶成長とバンド構造制御」を受賞した。
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