研究課題/領域番号 |
16H02109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 准教授 (80252493)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / ポテンショメトリ / スピン偏極トンネル顕微鏡 / スピン流 / 強磁性共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究で要求される精密な信号検出に対処すべく、現有の低温超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)装置の全体的なパフォーマンスを高めるとともに、スピン流計測に向けての各要素技術の導入を進めた。まずは、スピン流による微細なポテンシャル計測を可能とするための走査トンネルポテンショメトリの機能をSTM装置に導入しその性能を評価した。従来の大気中での測定に使用した回路・制御系を用いて超高真空中での測定を行い、原子スケールでの構造変化に対する抵抗変化に対しても十分に信号検出できることを確認した。さらに低温での測定も進めておりこちらの環境下に於いても十分に動作することを確認している。 同手法の装置開発段階において、半導体基板上での単原子層による金属相におけるポテンシャル測定を行うことに成功し、単原子層上に存在する単原子高さのステップ構造や位相境界においても、ポテンシャル段差すなわち電気抵抗成分が存在することを初めて実証することに成功している。ステップ構造の密度は用いた基板の傾きに依存するが、系によっては基板傾きの許容値内でもステップでの抵抗が効いてくることが判明し、これまでの同系における電気伝導測定におけるバラつきがこのことによって説明できることが判明した。 一方、もう一つの要素技術であるスピン偏極STMに関しては、スピン分解能や測定の安定性を向上させるべく装置、特に信号検出部分での改良を進めるとともに、本研究の目的に適う探針の探索・評価を進めることによって、対象とする系の性質に応じて適切な探針の選択をすることより十分な精度でスピン偏極信号を取得できることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究にて要求されるレベルでの装置の性能向上と、本研究のために不可欠となる技術要素である走査トンネルポテンショメトリ手法とスピン偏極STMを実装し、検出感度や測定安定度を高めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
もう一つの要素技術である高周波導入を推進するために、初年度は連携研究員であり当該技術に優れたノウハウを有する安東秀先生に、次年度には研究分担者として参画していただく予定である。
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