研究課題/領域番号 |
16H02117
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
湯上 浩雄 東北大学, 工学研究科, 教授 (60192803)
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研究分担者 |
金森 義明 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10333858)
清水 信 東北大学, 工学研究科, 助教 (60706836)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱光起電力発電 / 熱ダイオード / 波長選択性熱放射 / マイクロキャビティ / 熱放射準単色化 |
研究実績の概要 |
本研究ではこれまでの研究で培ってきた高温環境下でのふく射スペクトル制御技術、すなわち高温フォトニクスに基づく熱ダイオード技術および熱放射準単色化技術の開発を行い、ソーラー熱光起電力(Thermo PhotoVoltaic; TPV)発電システムの飛躍的効率向上を目的とする。ソーラーTPV発電は集光太陽光によって加熱された放射体からの熱放射光をPVセルによって電力へ変換するシステムであり、多接合セルを用いる集光型太陽光発電と競合できるレベルの発電効率を潜在的に有し、且つ単接合セルを用いるため発電コストを低く抑えることができる。しかし現在報告されている最大効率は10%以下と低い。本システム効率向上のためには各デバイス間におけるエネルギー輸送効率の大幅な向上が必要であり、本研究はソーラーTPV発電システム効率向上のためのブレークスルー技術になると期待される。大幅な効率向上実現のために本年度は熱放射スペクトル制御による熱ダイオード技術の開発、および熱放射準単色化技術の開発を行った。
ソーラーTPVシステム高効率化のためには入射エネルギー量と放射面からの熱放射量との比、すなわち熱の整流性の指標となる放射抽出効率を大きくする必要がある。本年度はエミッタからの熱放射量比を大きくしたアブソーバ・エミッタシステムを用いた発電システムの設計を行い、多層膜を用いて熱ふく射スペクトル特性を制御することによって75%以上の放射抽出効率が実現できることを示した。また設計したアブソーバ・エミッタ構造の作製プロセスを最適化し、構造を実現した。また、微細キャビティ構造に基づく熱放射準単色化構造の作製においてもプロセス設計を行い、構造の実現および光学特性評価を行った。解析値と同様の特性は得られていないものの、想定した構造に起因するピークを発現させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はふく射スペクトル制御型熱ダイオード技術および熱ふく射準単色化技術に基づくソーラー熱光起電力発電システムの大幅な効率向上実現である。本年度は高効率発電システム実現のための要素技術である、ふく射スペクトル制御型熱ダイオード技術および熱ふく射準単色化技術の開発および実証を目的として研究を行った。その結果、多層膜構造表面を持つ、エミッタからの熱放射量比を大きくしたアブソーバ・エミッタ構造において75%の高い放射抽出効率が達成可能であることを示し、また微細キャビティ構造を用いた熱ふく射準単色化技術においても実際の構造作製を進め、熱ふく射準単色化への道筋がついたことから本研究はおおむね順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は整流特性を評価するための評価手法の確立と実測による放射熱伝達量の評価を行う。またエミッタにおける熱ふく射準単色化のための構造を実現し、高温熱放射特性を評価する。さらにそれら基板技術を取り入れた発電システムの設計を行い発電性能評価に向け研究を進める。
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