この年度では、これまで不可能と思われていたハードX線の領域での、共振器型のレーザーの実現に成功したことが最も大きなことである。これまで直反射鏡がないことや上準位の寿命が1f程度以下であることを考え、理想的な共振器を作ることは困難なことと考えられていた。しかし、固体をターゲットとし、10^20W/cm^2程度の高強度のX線励起を行えば、利得が理論計算上で40000cm^-1を超えることが可能で、fsの超短寿命の利得媒質でも定在波条件さえ実現すれば、共振器型レーザーと同等の働きを持たせられることを考え、実験実証を行った。まず、CuのKα線を対象に定在波型条件を達成できるターゲットを探索した。その結果、5水和の硫酸銅結晶が、Bragg条件で180度散乱の方向でKα線に共鳴となることが分かり、この大型結晶を育成、そこからの切り出しで、薄膜ターゲットを作成する技術を開発した。 次に、Bragg条件を達成する角度に調整した場合とそこから1度ずらした状態で、発振するKα線のスペクトルが大きく変化するかを調べた。さらに、シングルショットでのスペクトルをショットごとに解析を行い、共振器型のレーザーの特徴である縦モードに相当する構造が出ていることかを調べた。両者の点で、クリアな実験結果が得られた。これらの発見は、ハードX線レーザーにおいて、光学波長領域で行われている共振器を用いたレーザー制御が可能なことを初めて示した例となった。
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