研究課題/領域番号 |
16H02121
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 浩一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50235248)
|
研究分担者 |
西山 修輔 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30333628)
白井 直機 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80552281)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | プラズマ・液体相互作用 / 大気圧プラズマ / レーザー応用計測 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実績は以下の通りである。 まず,針状ノズル電極と水面の間のヘリウムガス流に沿って大気圧グロー放電を生成する装置を整備し,気液界面の気相側に存在する化学種を主として発光分光法によってモニターするとともに,液相から放出される液滴およびスチームの振る舞いをレーザー散乱法によって調べた。水面が陰極として働く場合において,液相に存在する正の金属イオンが気相に輸送され,プラズマ中で金属原子となるメカニズムは,液滴の発生を介してのプロセスであることについての確信を深めた。 次に,プラズマと相互作用する液面の動的挙動をシャドウグラフ法により高速動画撮影するのと同時に,プラズマ柱の動的挙動を高速動画撮影することにより,プラズマ柱の照射と液面の形状との間にどのような相関関係があるかを調べた。液面が陽極の時には液面形状は静的な窪みを形成したが,液面が陰極の時には液面の窪みは動的に変化した。窪みの深さは液体の電気伝導度に依存し,放電電流に対して増加した。また,塩化ナトリウム溶液を陰極に用いたとき,プラズマ気相側の気液界面直近においてナトリウム原子が強く発光する瞬間に液面に過渡的な窪みが形成され,時折気泡となる現象を見いだした。 また,弱く冷却されたスズターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングプラズマを生成するとスズターゲットが液化することに気づいたので,これを利用して真空環境におけるプラズマ液体相互作用を調べる実験を行った。ターゲットが固体の場合と液体の場合において,プラズマ気相に存在するスパッタ放出されたスズ原子密度およびその分布には差異が無いものの,ターゲットが液体の場合にはエロージョンが速く,その原因は液体ターゲットからの液滴の放出であることを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画著書に記載した研究計画との間に年度ごとの実験項目に関する差異があるものの,次年度以降に実施する予定であった実験項目を先行して実施しており,また,研究計画調書を作成した後に着想した実験事項を実施することにより研究計画調書に記載した研究目的を得るために有用な知見が得られているため,おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究により,液滴およびスチームの生成現象は明らかにされたが,プラズマ中で液滴が蒸発したときの粒子生成現象は未解明である。平成29年度には,Nd:YAGレーザーを用いた液滴の瞬時気化法を導入し,そのときに発生するラジカルをレーザー誘起蛍光法により測定することで,液滴の気化によりラジカルが生成されるかを調べる。また,研究計画調書ではナトリウムとしていた計測対象ラジカルをカルシウムとすることにより,気相に輸送された液相由来の中性原子とイオンの両方の密度分布を調べる予定である。 研究計画調書では,平成29年度には研究の中心を液相に移行することとしている。液面形状とプラズマ柱の動的挙動の相関関係の調査については平成28年度に先行して実施したので,平成29年度には,酸化力が特に強い液中活性種に反応する新規な化学プローブを開拓し,プラズマ直下の液相における短寿命活性種の振る舞いを調べたい。また,それよりもマクロな領域における反応現象を調べる方法として,研究計画調書に記載したフェノールをトレーサーとしたレーザー誘起蛍光法は既に実施したので,平成29年度はテレフタル酸を用いたOHラジカルのトラップを画像計測化する方法を研究する。 以上の研究計画調書に記載した実験項目に加え,新しく着想した以下の研究項目を実施したい。平成28年度には液体スズをマグネトロンスパッタリングに導入することにより金属液滴の放出現象を観察した。平成29年度には,イオンエネルギーとイオンフラックスが独立に制御された条件で液体金属とプラズマとの相互作用を研究する。また,フラッシュフォトリシスを用いて液体中で溶媒和電子を生成する手段を文献調査によって知ったので,この方法に基づいた一種のポンプ・プローブ法の実験システムを構築し,プラズマと相互作用する液中での溶媒和電子の反応を調べたい。
|