研究課題
加速器で合成される原子番号100を超える超重元素の化学的研究に、量子(原子、分子及びイオン)ビームの手法を導入して新たな研究の展開を図ることを目的とする。本研究では、シングルアトムレベルで合成される超重元素を低速原子ビームとして取り出す技術を開発し、超重原子の価電子構造研究への足掛かりをつかむ。併せて、イオンビーム法の高度化を進め、超重元素のイオン化エネルギーや超重原子の金属表面への吸着挙動を調べ、相対論効果の影響を受けた 価電子構造と化学挙動の関連を明らかにする。2020年度は、以下の4テーマをもとに遂行した。(1)低速超重原子ビーム取り出し技術の開発:イオンビームを電子と再結合させることで原子ビームとして取り出す技術の開発を進めた(電子再結合型原子ビーム生成装置)。取り出したイオンビーム強度の減少から間接的ではあるが、原子ビームの生成を示唆する結果が得られた。一方これまで開発を進めてきた高温ノズル型原子ビーム生成装置は、現段階では生成効率が小さく超重元素への適応にはさらなる改良を必要とすることがわかった。(2)イオンビーム生成技術の高度化:原子番号104を超える超アクチノイド元素のイオン化を目指して、電子衝撃型イオン源の製作を継続した。動作試験ならびに性能試験を開始することができた。(3)超重原子の金属表面への吸着:これまでに観測した103番元素ローレンシウムの吸着挙動を定量的に理解するため、金属表面での吸脱着とイオン化のプロセスを仮定したシミュレーション計算のコード開発を継続した。今後実験結果を含めて論文として投稿予定である。(4)超重元素分子(105番元素ドブニウム, Db)の合成とその化学挙動:シングルアトム分析に適用可能なガスクロマトグラフ装置を開発し、DbOCl3という化学種の生成とその熱化学的特性を明らかにした。結果を論文として投稿した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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