研究課題/領域番号 |
16H02132
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
柳下 明 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (80157966)
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研究分担者 |
峰本 紳一郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90323493)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超高速光電子回折法 / X線自由電子レーザー / 分子光化学反応 / 光異性化反応 / 分子ムービー |
研究実績の概要 |
800nmの近紫外短パルスレーザーによる、Ar 3p光電子のサイドバンドの測定結果およびその解析結果を論文として発表した。これらの結果からSACLAのシステムにおいては、近紫外短パルスレーザーとEUV-FELパルスとの間に、およそ1psecものタイミング・ジッターがあることを明らかにした。2018年2月22日から2月26日のSACLAの実験では、800nmの近紫外短パルスレーザーでCO2分子の回転波束を誘起して、その後の分子の配列度をEUV-FELパルスによる解離イオンの角度分布によりモニターする実験をおこなった。この実験では、解離イオンと同時に価電子帯の光電子も測定しているので、現在、時間依存(配列度依存)の光電子の回折像も解析している。 これらの実験研究と平行して、超高速光電子回折法で得られることが期待される、実験結果のシミュレーションに関する理論研究をおこなった。その結果、核間距離が平衡核間距離から無限大の距離まで伸びる解離性の反応では、光電子回折を統一的に扱える理論がないので、光電離理論と光電子回折理論の両者を援用して、解離性反応を統一的に扱える理論の枠組みを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
nsecの近紫外短パルスレーザーで断熱的に分子を配列させること、そして~100fsecの近紫外短パルスレーザーで非断熱的に分子を配列させることは成功し、習熟してきた。今後は、配列用のレーザー・励起用の光学レーザー・プローブ用のEUV-FELの三つのレーザーの同期実験で、超高速光電子回折実験をおこなう。しかしながら、SACLAのシステムにおいてはタイミング・ジッターが大きいので、2018年5月30日から6月3日のSACLAの実験では、psecオーダーの比較的遅い解離反応「CH3I→CH3 + I」に的をしぼり、超高速光電子回折実験をおこなう予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
本超高速光電子回折法では、軽元素の最内殻の光電離が可能な軟X線のFELが必要であり、タイミング・ジッターは50fsec以下でなければならない。しかしながら、SACLAのEUV-FELではこれらの条件を満たすことが出来ないことが明らかになってきた。一方で、韓国浦項のPAL-XFELはこれらの条件を満足することが判明した。よって、現在PAL-XFELのビームライン担当者と連絡をとり、本実験をPAL-XFELで実施することを検討している。
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