本研究の加速管構造としては、誘電体と真空部が周期的に並ぶ2次元フォトニック構造で高周波電力の大部分を内部に閉じ込め、最外殻部に位置する常伝導壁での電界強度を下げ、高周波損失を低減化させるフォトニックアシスト型とする。 加速管内部が誘電体のみで構成されているため、加速管の放電限界は、誘電体の耐電圧で決まる。一般的に、誘電体の耐電圧は、金属の約数十倍高いため、原理的には加速電界が100MV/mを超える超高電界加速が可能であると考えられる。既に様々な高純度セラミックスの材料測定を行い、100万以上のQ値が得られている。また単層のフォトニックアシスト型空洞の低電力試験で既に常伝導では到達不可能な室温で10万程度のQ値が得られている。従って、本研究期間内に明らかにする課題は、これらの空洞の高電界試験を行い、超高電界の加速空洞を実現する事であった。 最終年度は誘電体アシスト型空洞の最小単位である2セル空洞に様々な高純度セラミックや単結晶誘電体を使い、これに様々なコーティングを施し高電界試験を行った。その結果としてセラミックの2次電子放出を抑制するためのコーティングを行った空洞の高電界試験を行い、複数のサンプルに置いて実用的な 10MV/m近い加速電界が定常的に得られる事が確認できた。またこのコーティングによってQ値も変化しない事が実証できた。 また冷凍機を用いて誘電体空洞を冷却し、これを用いて低電力試験によって従来の常温より遥かに高いQ値を得る事ができ、また高電界試験も行う事ができた。さらに高い電界を得るためにXバンドのセルも製作し、低電力試験を行った。
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