研究課題/領域番号 |
16H02136
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
上垣外 修一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 部長 (00260191)
|
研究分担者 |
金井 保之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別嘱託研究員 (00177487)
中川 孝秀 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (00360602)
笹尾 登 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任教授 (10115850)
市川 雄一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (20532089)
吉見 彰洋 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (40333314)
長友 傑 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任技師 (60418621)
吉村 太彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (70108447)
原 秀明 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(助教) (70737311)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 量子ビーム / 原子・分子物理学 / 加速器 / 実験核物理 / 素粒子実験 / 重イオンビーム / コヒーランス / レーザー |
研究実績の概要 |
バリウム(Ba)イオン源を立ち上げ、新奇光ビームの発生を低エネルギー領域において実証することを目標とした。この方針の下、(1) 表面電離型イオン源の性能評価実験とレーザー装置の完成、(2) 電磁石を用いた最終セットアップの設計製作、(3) 関連する理論の進展等を試みた。以下にその結果を詳述する。(1-1)表面イオン源を立ち上げ、およそ1マイクロアンペアのBaイオンを引き出すことに成功した。同位体の分離も行い、自然存在比にほぼ一致することを確認した。ペーパーポット型エミタンス測定装置でエミタンスを測定し、目標実現に十分な性能を確認した。(1-2) Baイオンの励起(1S1/2-2P1/2)に必要なレーザーシステム(波長493nm)を製作した。システムは種光(波長987nm)を生成する外部共振器型半導体レーザー、それを増幅するYbドープファイバー増幅器、および第二高調波発生装置から構成される。最終的には数mWの出力が得られ、実験に必要な強度が得られることを確認した。(1-3) Baイオン脱励起過程を測定する検出装置を作成した。予想される脱励起光は波長493nm(2P1/2-1S1/2)及び650nm(2P1/2-1D3/2)の2種類である。これらの脱励起光を測定するため光電子増倍管を用いた検出装置を作成した。(2-1) 完成した装置を組上げ、磁場のない状態での励起及び脱励起光の測定を行った。その結果、脱励起光を観測し、励起の中心波長、断面積、共鳴幅等を測定することに成功した。詳細な分析は進行中であるが、中心波長は文献値に一致すること、カウントレートは予想よりやや少ないことなどが判明している。(2-2)以上の成果を基に、磁場中でのBaイオン脱励起過程の設計を開始した。(3) 本研究に関連して、光渦の研究を行った。非相対論的な計算がほぼ終了し、相対論的な計算が進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の概要にも記したように、今年度においては、バリウムイオン源、レーザー装置、検出器などを完成させた。またこれらを用いてバリウムイオン源の性能試験(電流量およびエミタンス測定)などを行い、さらにレーザーを組み合わせて、励起実験を行った。この結果は、様々改良の余地は存在するものの、新規ビームの検証に向けて大きく前進したといえる.。磁場の導入及び関連する装置の設計が開始されている。この他、光渦の理論的研究も順調に進展した。以上よりほぼ順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は当初の方針通り新奇光ビームの発生を低エネルギー領域に於いて実証することを目標とする。このため電磁石を用いた最終セットアップの完成を目指す。より具体的には、新奇光ビームの発生を低エネルギー領域に於いて実証するため、加速中の(磁場による円運動による)バリウムイオンにレーザーを照射しその脱励起光を観測する。レーザーの照射や脱励起の観測自体には既に成功しているので、加速中のイオンビームからの脱励起光の性質を詳細に研究すること、特に磁場強さに対する依存性や励起時間からの時間経過依存性などに注目する。これらの実験をする上での様々なシミュレーションソフトウェアを整備し、実験結果と比較する。また前年度に引き続き関連する光渦に関する理論的研究を継続する。光渦は、スピン角運動量のみならず軌道角運動量を有する光であるが、ガンマ線領域(MeV程度以上)は実現されていない。もし実現されれば、新たな物理学を開拓できると期待されている。本研究の主題であるイオンからの脱励起過程を用いると、強度の非常に大きいガンマ線の生成が可能となる。今後イオンを用いた光渦の発生について論文にまとめる。
|