研究課題/領域番号 |
16H02137
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 賢二郎 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40282678)
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研究分担者 |
京谷 孝史 東北大学, 工学研究科, 教授 (00186347)
加藤 準治 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00594087)
高瀬 慎介 八戸工業大学, 工学部, 講師 (00748808)
竹内 則雄 法政大学, デザイン工学部, 教授 (10126112)
森口 周二 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20447527)
車谷 麻緒 茨城大学, 工学部, 准教授 (20552392)
新宅 勇一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80780064)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破壊シミュレーション / 逐次破壊モデル / 結合力モデル / 災害リスク評価 |
研究実績の概要 |
次のようなマルチステージ破壊現象を数値的に再現可能なシミュレーション手法を構築するための定式化と一部プログラム実装を終えることができた。 (1) Stage IからIIに至る過程でミクロき裂が強度・剛性を低下させ、メソき裂に成長する現象 (2) Stage IIからIIIに至る過程で構造的に安定な静的平衡状態から不安定・運動状態へ移行する現象 (3) Stage IIIにおける部分的崩壊した構造物の大変位・大回転運動が発展し、全体的な崩壊に至る過程と終局状態 これらを矛盾なく再現ことを意図して、それぞれ(A) 連続体と不連続変形の力学の融合と(B)静力学と動力学の融合のために、(a) 共回転定式化による有限変位・回転問題と微小変形材料モデルとの矛盾のない関係づけ、(b) 潜在的き裂面を初期状態で弾性的に結合され、かつき裂発生条件により分断されるようなモデルの実装 (c) き裂生成後にブロック状の物体が動的運動を始める際の時間積分法、(d) 自由に運動を始めた物体が別のブロックあるいは他の物体との接触・摩擦を繰り返す際の取り扱い方、などの理論と技術の構築を試みた。ここで、(1)から(2)に至る過程では、①マクロ的な材料の剛性・強度の低下を伴ってミクロき裂の幾つかがメゾ(マクロ)き裂へと発展し、応力伝達メカニズムが変化する過程(Stage I-II)、②静的に安定な状態だった構造物が座屈などより不安定化し、その一部が運動を開始して崩壊モードに移行する過程(Stage II-III)であるが、これらをある程度の精度を担保しながら再現するための理論の定式化はほぼ完了したが、一部のプログラム実装と精度検証が済んでいない。特に、②については、構造不安定から運動モードへの移行はスムーズにできるようになったが、次年度に支配方程式が平衡方程式(つり合い式)から運動方程式に変化することを数値的に再現し、その結果を検証するためにモーションキャプチャにより実測データを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的問題の定式化が比較的順調に進み、Mid-Pointアルゴリズムの採用により非線形問題でも安定的な時間積分が可能になったため、年度内の比較的早い時期に接触・摩擦の定式化とAugumented Lagrangian法の実装に移ることができた。ただし、潜在き裂面上に結合力モデルをモデル化し、実装することまでは叶わなかったため、総合的には「おおむね順調」としたい。
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今後の研究の推進方策 |
構造不安定から運動モードへの移行であり、支配方程式は平衡方程式(つり合い式)から運動方程式に変化するため、本年度は、モーションキャプチャにより取得した実測データを比較対象として精度検証を繰り返す予定である。また、解析コードの高速化を意図して並列計算用のプログラムに書き換え、大規模並列計算による実際の斜面崩壊事例などの再現解析も行い、手法の適用性についても議論する。また、結合力モデルを潜在き裂面に実装するが、これまでの経験上、有限変位・回転挙動のための共回転定式化との相性が悪いことが分かっており、何らかの安定化手法の導入が必要であると考えている。さらに、実際の構造物が倒壊する際に発現する非弾性挙動およびエネルギー吸収現象を再現するためには、弾塑性挙動や微視的ひび割れに起因する巨視的損傷挙動についても実装する必要があると考えている。
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