研究課題/領域番号 |
16H02155
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯 祐介 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70203065)
|
研究分担者 |
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00362583)
大川 晋平 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医用工学, 助教 (20432049)
大石 直也 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定講師 (40526878)
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
今井 仁司 同志社大学, 理工学部, 教授 (80203298)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 数値解析 / 逆問題 / 数値計算 / 輸送方程式 / 生体医用工学 |
研究実績の概要 |
近赤外光を利用して、生体内の血流測定から生体内情報を得る断層撮影が DOT(Diffused Optical Tomography = 拡散光トモグラフィー、通称「ひかりトモグラフィー」)である。これはX線を利用する従来の断層撮影とは大きく異なって非侵襲的であり、また磁場の影響も排除した極めて安全な生体断層撮影であり、脳の活動計測への利用が期待されている。代表者はこの技術は輸送方程式の逆問題として問題設定すべきと従来主張しており、DOT の実現を目指して輸送方程式の逆問題解析を数学解析と数値解析の両面から行うことが本課題研究である。 先行研究によって、当面の逆問題解法としては、順問題の繰り返し計算によるアプローチに一定の成果が期待されている。しかし輸送方程式の数値計算は極めて大規模であるため、現実の数値計算環境を充実させた上での数値計算を行うことが求められる。このため、本課題研究推進上の喫緊の準備ととしては、代表者と分担者の計算環境を充実することが不可欠であり、平成28年度は代表者・分担者とも数値計算環境の充実をおこない、その上で事例研究の蓄積することを優先的課題とした。結果としては定常輸送方程式の境界値問題(順問題)を従来よりも大規模な離散化で効率的に数値計算が行えるようになり、特に3次元問題で高精度な数値解を得るに至った。また「光超音波」に関する数値実験でも、分担者により高精度な数値解が分担者によって得られた。さらに研究協力者の成果として、粘弾性方程式を利用した医用目的の MR 画像構成を想定した数値計算について、非適合要素を利用した有限要素解析で安定した高精度化数値解を得るに至った。さらに繰り返し計算の多い大規模連立方程式の数値計算を並列計算環境で行う場合、計算機間のデータ転送も考慮した計算誤差伝播に踏み込んだ新たな数値解析理論の新たな構築の必要性を指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は分担者の計算環境の整備を行い、数値計算事例蓄積することを重点項目とした。代表者・分担者とも当初計画通りに計算環境の整備が図られ、順次新たな計算事例が代表者の主宰するセミナー等でも報告されている。特に代表者と藤原宏志(分担者)の研究により、大規模な3次元定常輸送方程式の高精度解法に成果を得、順問題の繰り返し計算に帰着する手法での逆問題解析では想定通りの成果が得られた。一方で、定常輸送逆問題の数学解析では大きな進展が見られなかったものの、粘弾性方程式を基礎方程式とする MR 画像の有限要素法を利用した高精度化では藤原宏志が研究協力者と共に成果を挙げ、課題研究全体の進捗としては、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は前年度研究成果としてで蓄積された数値例をもとに、夫々の数値解法の特徴と優位性を比較検討し、定常輸送方程式の順問題解法の確立を図る計画である。また、定常輸送方程式の逆問題解析については、順問題の解の存在と一意性を一般的な枠の中で保証すると共に、解の特異性を考慮した逆問題の解の再構成手法の議論を発展させる計画である。以上の基盤的研究をもとに、平成30年度以降には、解の特異性を考慮したアルゴリズムによる定常輸送方程式の未定係数決定逆問題の数学解析と数値解析の両面を進展させる計画である。
|