研究課題/領域番号 |
16H02160
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
犬塚 修一郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (80270453)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 星形成 / 星間媒質 / 宇宙線 / 乱流 / 磁場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,太陽系近傍の銀河系円盤部の星形成論をさらに発展させ,銀河系の動的な進化の描像を確立することである.幾何学的に薄い銀河円盤の体積の大部分を占めるのは温度数千度程度の弱電離ガスであり,それは亜音速乱流状態にある.そのダイナミックスを駆動する大質量星による電離領域の膨張や超新星爆発による星間媒質の衝撃波圧縮作用では,低温高密度ガス雲形成過程のみならず,星間磁場増幅や高エネルギー宇宙線粒子加速・拡散も引き起こされる.本研究では銀河系の長い時間スケールにおける星形成活動と銀河進化を理解することを目的としている. 既にこれまでの研究により,熱的不安定性に起因する多相構造が星間媒質の小スケールにまで埋め込まれているを我々は突き止めている.超新星残骸がこのような非一様な星間媒質中に伝搬することに伴い,百万年に一回の頻度で大規模衝撃波によって星間媒質は掃かれることになる.その結果,薄い銀河円盤空間の大部分を占めるウォームガス(WNM)の音速程度の乱流が常に駆動されており,乱流エネルギー密度はウォームガスの熱エネルギー密度程度になることが示唆される.また,ダイナモ理論の帰結として,磁場エネルギー密度がウォームガスと同程度になることが期待される. 一方,繰り越しを行った経費により途中から博士研究員を雇用することができた.その研究員とは宇宙線圧力によって駆動される銀河風についての研究を開始している.これに関する先行研究によると,宇宙線圧力が卓越する場合は銀河風がよく吹くことが示されており,このことが銀河面内における宇宙線圧力の飽和値を決定している可能性が示唆された. 以上をまとめると,つまり,ウォームガスの熱エネルギー密度と乱流エネルギー密度と磁場エネルギー密度と宇宙線のエネルギー密度が同じ程度の大きさになる理由を理解する端緒が得られたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙線圧力の効果を入れた星間媒質の研究が遅れていたが,繰越した予算を用いて新たな博士研究員を雇用し,この方向の研究についての目途が立ってきた.
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今後の研究の推進方策 |
繰り越した予算で雇用した博士研究員がこの科研費の研究に集中できない状況になったので,さらに新たに研究員を雇用して,研究を発展させることを目指す.
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