研究課題
小質量形成のフィラメントパラダイム(Inutsuka+2015)をさらに発展させて,大質量星を含む星団の形成の現場と考えられる高柱密度ガスが大量に存在する星形成領域をHub-Filament Systemとして同定し,その進化シナリオを提案した(Kumar+2020).そのシナリオではすべての星形成領域に見られる小質量星を形成するフィラメント状分子雲が合体することで高密度ガス領域を形成し,フィラメント状分子雲における星形成の延長として大質量星を形成するという考えに基づいている.このことは大きな質量のガス塊を形成するメカニズムを与えるだけでなく,太陽質量よりも小さい質量の星から太陽質量の十倍以上の質量の星まで滑らかに伸びる初期質量関数の特徴を説明できることに特徴がある.研究対象は銀河系中心部の星形成活動にも広げた.空間解像度の低い観測によると,銀河系中心部では星形成率が銀河円盤部の10%程度であると見積もられている.この低い星形成率に反して,電波干渉計ALMAを用いた高空間分解能観測により,局所的な星形成活動は小質量星しか形成されていない太陽系近傍の星形成過程の特徴と一致していることを突き止めた(Lu+2021).さらに,銀河円盤部の宇宙線エネルギー密度が現在推定されている値(1eV/cc)程度になると,銀河面から継続的にガスの放出が起こることを突き止めた(Shimoda & Inutsuka 2021). つまり,長い時間スケール(1千万年以上)で星形成活動が活発になり,銀河面での超新星爆発率が上がり,加速された宇宙線エネルギー密度が現在の値程度になると,重元素を含むガスを銀河ハローに送り出し,円盤面内のガスを減らすことで星形成率を下げるという負のフィードバックがかかることになる.これにより,銀河円盤内の星間媒質のエネルギー等分配則の起源だという理論を提案した.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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