研究実績の概要 |
申請書の研究計画にあるように、銀河と銀河間空間の共進化の統一モデル構築の礎を造ることを目的として研究を進めた。[1] ALMAによるDLA (Damped Lyman alpha aAbsorption system) のスーパーウインド起源説の観測的立証:DLAがスーパーウインド起源であれば、DLAの周辺に大規模な低温ガスから成るシェル状構造が存在するはずである。これを確認するためにLAB (Lyman Alpha Blob) が付随しているz=3のDLAに対してALMAによる[CII]158μm輝線マッピングのデータ解析を完了した。これを順調に遂行するために研究員を10月1日から雇用した。[2] すばる望遠鏡によるDLAのスーパーウインド起源説の観測的立証:すばる望遠鏡の広視野主焦点カメラであるスプリーム・カムで取得した撮像データの解析を完了し、論文として成果公表した(Ogura, K., et al. 2017, PASJ, in press; arXiv170305756)。 本研究ではDLAがクラスタリングしている領域を世界で初めて同定することに成功した。その結果、 DLAに付随する宇宙大規模構造との関連で、重要な成果を得ることができた。(3) さらに、z=3 のスーパーウインド銀河のスペクトル観測をすばる望遠鏡で行った(2017年1月)。これについては、データ解析を開始したところであり、成果公表に期待される。(4) 特記事項として、ALMAの観測データに基づき、近傍宇宙の代表的な活動銀河中心核を有する NGC 1068 の高解像度電波観測から、従来知られていなかった性質を持つ、星生成をする大質量分子ガス雲を発見することに成功したことがあげられる。この成果は研究論文として公表されたのみならず (Furuya, R. S., and Taniguchi, Y. 2016, PASJ, 68, id. 103)、九州大学で開催された日本天文学会2017年春季年会のプレスリリース講演として採択され、NHKや読売新聞などのニュースに取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALMAによるz=3.1 のDLAのデータ解析を完了させた。観測計画としては、新たな観測提案を続行させた。すばる望遠鏡によるDLAの環境依存性(宇宙大規模構造との関連性)については、解析を完了させ、研究論文として成果公表した(Ogura, K., et al. 2017, PASJ, in press; arXiv170305756)。また、すばる望遠鏡の追加観測も完了して、鋭意データ解析が進行中であること、およびハワイ島マウナケア山にあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡の新たな観測時間を得ることができたので、さらなる進展が図れることである。さらに、z=3 のスーパーウインド銀河のスペクトル観測をすばる望遠鏡で行った(2017年1月)。これについては、データ解析を開始したところであり、成果公表に期待される。 本研究と関連する研究テーマの解説として、日本天文学会の機関誌である天文月報に以下の記事を書いた:[a] コスモスな日々、再び ー 突然、星を作らなくなった銀河の発見」2016年、4月号、271 - 281、 [b] 「誰が銀河中心核に火をつけたのか? ー スターバースト・活動銀河中心核の進化的統一モデルへの道」2016年、5月号、339 - 353、[c] 「ALMA望遠鏡による銀河の観測」2017年、3月号、185 - 202。これらの解説記事の出版により、日本天文学会の会員に本研究の意義を広く周知できたと考えている。
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