研究課題/領域番号 |
16H02166
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
谷口 義明 放送大学, 教養学部, 教授 (40192637)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 銀河形成 / 銀河進化 / スーパーウインド / 銀河間空間 / 超大質量ブラックホール |
研究実績の概要 |
宇宙における最も基本的な構成要素は銀河である。一方、銀河と銀河の間に拡がる銀河間空間は銀河と共進化してきており、宇宙の進化の総合的な理解には欠かせない要素であるが、研究は大いに立ち遅れているのが現状である。そこで、本研究では銀河における大規模な星生成の後に発生するスーパーウインド(銀河風)をドライバーとして、銀河間空間が銀河とどのように進化してきたかを電波と可視光帯での最先端研究を駆使して明らかにすることを目的とする。スーパーウインドは可視光では遠方宇宙にある若い銀河に付随する巨大電離ガス雲として認識されるだけではなく、クエーサー吸収線系としても認識されうる。これらの天体を電波(ALMA)と可視光(すばる望遠鏡)の協同観測により、銀河と銀河間空間の共進化の統一モデル構築の礎を造る。 本年度は、ALMA Cycle 5 で採択された観測提案”Central-Inversion Ly alpha Emission in a DLA"の観測が行われたので、データ解析を進め論文として研究成果報告を行う。また、新たなDLAサンプルを構築しALMA Cycle 7 に観測提案を行った。 すばる望遠鏡による観測では近傍宇宙にある活動銀河中心核を有する銀河のディープな撮像観測を進めてきている。データの解析を進た。 超長基線電波干渉計(VLBI)で得られたNGC1068の活動銀河中心核で発生している活動性を研究するために、水メーザーの超高解像データの解析を進め、論文として研究成果報告をほぼまとめ上げることができた。 これらの研究計画を進めることで、銀河形成期から現在まで、銀河における星生成活動、スーパーウインドによる銀河間空間の電離、および活動銀河中心核の発現メカニズムと銀河間空間に及ぼす影響に関して総合的な研究を推進することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、令和元年度は、ALMA Cycle 5 で採択された観測提案”Central-Inversion Ly alpha Emission in a DLA"の観測が行われたので、データ解析を進め論文として研究成果報告を行う。また、新たなDLAサンプルを構築しALMA Cycle 7 に観測提案を行った。 すばる望遠鏡による観測では近傍宇宙にある活動銀河中心核を有する銀河のディープな撮像観測を進めてきている。データの解析を進た。 超長基線電波干渉計(VLBI)で得られたNGC1068の活動銀河中心核で発生している活動性を研究するために、水メーザーの超高解像データの解析を進め、論文として研究成果報告をほぼまとめ上げることができた。 これらの研究計画を進めることで、銀河形成期から現在まで、銀河における星生成活動、スーパーウインドによる銀河間空間の電離、および活動銀河中心核の発現メカニズムと銀河間空間に及ぼす影響に関して総合的な研究を推進することができた。 なお、2020年1月からCOVID19の蔓延が始まり、学会、研究会、およびface-to-faceでの打ち合わせが困難となった。そのため、オンライン(Zoomなどを利用)による対応となり、共同研究や研究交流にはやや影響が出たと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度までの進捗に基づき、さらにALMAやすばる望遠鏡による遠方銀河の観測を推進していく。 銀河と銀河間空間の共進化においては、次の二種類のプロセスが主として働いていると考えられる。(1)銀河で発生する大規模な星生成(スターバースト)の後に起こるバースト的な超新星爆発で解放される力学的エネルギーにより銀河風が発生する。銀河風の運動エネルギーは銀河の重力ポテンシャルより大きくなる場合、銀河間空間にガスが放出され、銀河と銀河間空間の相互作用が発生する。(2)銀河の中心部に存在する超大質量ブラックホールにガスが降着し、その際に解放される重力エネルギーを李王して、銀河中心部から相対論的な速度でジェットが放出されることがある。このジェットは銀河風と同様に銀河間空間に飛び出していくので、銀河と銀河間空間の相互作用が起きる。銀河風は比較的等方的なガスの放出を引き起こすが、ジェットは双極流として放出される違いがある。 本研究では主として(1)にウエイトを置いて研究を進めてきたが、(2)のプロセスを排除する理由はない。実際、遠方の宇宙では超大質量ブラックホールに起因する非常に明るい活動的な銀河中心核(クエーサーと呼ばれる)が観測されている。近傍の宇宙では光度は一桁暗くなるが、物理的には全く同じプロセスでジェットを出している銀河がある(セイファート銀河)。物理機構の解明には充分な精度で観測できるセイファート銀河は極めて有用である。そこで、クエーサーのみならず近傍のセイファート銀河の観測的研究についても積極的に挑戦していきたい。
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