銀河形成期に発生する大規模な星生成(スターバースト)で生まれた大質量星は数千万年以内に超新星爆発を起こして死ぬ。連鎖的な超新星爆発は銀河スケールの大規模な銀河風(スーパーウインド)現象を発生させ、銀河間空間に銀河内の星間ガスを放出する。この過程を通じて銀河と銀河間空間は物理的・化学的相互作用をする。この研究を推進するには遠方宇宙にある形成途上の銀河の探査、およびそれらの観測的性質を調べることが重要になる。本研究では可視光帯では若い銀河の顕著な特徴である水素原子の放射するライマンα輝線で明るい銀河、また電波帯では一階電離炭素の放射する [Cii]158ミクロン輝線で明るい銀河に着目し、研究を進めてきた。一方、銀河中心に存在する超大質量ブラックホールへの質量降着でエネルギーを生み出す活動銀河中心核に対しては、水分子の放射するメーザー輝線(ジェット現象に起因する)を利用したユニークな研究を行ってきた(Morishima et al. 2023)。これは、活動銀河核からのジェットも銀河間空間と相互作用を行うためである。 さらに、銀河間空間との相互作用を正しく理解するためには銀河を取り巻くダークマター・ハローの研究が重要である。銀河円盤と直交する方向にリングを持つ銀河(ポーラーリング銀河)の系統的研究を新たに開始した。広域の新宇宙探索で有名な天域であるCOSMOS天域に新たなポーラーリング銀河を発見し (Nishimura et al. 2023)、追及観測を京都大学せいめい望遠鏡(口径3.8メートルのマルチ・ミラー反射望遠鏡)で開始したところである。これらの新たな視点からの取り組みを導入することで、銀河と銀河間空間の相互作用について理解を深めていくことが期待される。
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