研究課題
本研究は、2部構成になっており、最終的にこれらが一体として実施される予定である。(A)複数波長帯電波同時観測システムを、高感度を実現する野辺山45m電波望遠鏡に構築する。(B)日韓VLBI事業(KaVA)大型観測プログラムを推進し、晩期星からの質量放出の様子を反映する星周メーザー源の振舞いを統計的に把握する。(A)においては、システムの骨幹を成し新規開発する大型周波数選択膜について、開発すべき2枚のうち1枚の開発に成功し、目標の3波長バンド(13mm/7mm/3mm)のうち13mm及び7mmバンドの単一望遠鏡による同時観測が実現しつつある。(B)については、KaVA大型観測プログラム第一弾の観測が完了し、80天体にも及ぶ星周メーザー源について各メーザー放射(H2O/SiO)の有無について把握することができた。次にこれらのデータを処理してメーザー源の撮像をすべく、そのために必要なパイプライン処理スクリプトの開発が進んだ。関連するその他の成果として、以下のものがある。(C)本研究で実施する3波長バンド同時VLBI観測を韓国VLBI観測網(KVN)を用いて先行して実施し、活動銀河中心核を取り巻くガストーラスに付随する分子ガスによる吸収線の撮像に成功した。(D)日本国内の8台の電波望遠鏡(JVN)を総動員し、16天体の星周水メーザー源の撮像に成功し、このメーザー源の統計的分析に必要なデータを揃えることができた。(E)ロシアが主導する宇宙空間VLBI観測に協力し、極めてコンパクトで輝度温度の高い水メーザースポットの検出とVERAによるそれらスポットの位置同定に成功した。(F)星周OHメーザー源に対する年周視差計測に基づいて、世界で初めて1kpc以遠にあるOHメーザー源の距離を直接決定することに成功した。(G)星周SiO v=3メーザーの空間分布における時間変化の性質を明らかにした。
3: やや遅れている
周波数選択板の開発が順調に進んでいるが、それを使った科学的観測に必要な望遠鏡運用システムのテストが遅れている。また、同時に導入する新VLBI信号伝送・記録系については、必要な装置の納入と試験は進んでいるが、それらを実装するための条件についての調査が完了していない。当初のデザインではうまくいかないが、より適切な代替案が浮上し、その実現に向けて調査を継続している。KaVAやJVNによる観測で得られたデータに基づく研究成果の査読論文化が喫緊の課題となっている。統計的・科学的データ分析に必要なツールの整備が遅れている。しかし、KaVA大型観測プログラムの推進において、博士号取得前後のメンバーの活躍が目立ち、好材料になっている。特に基本的なデータ処理においてパイプラインの開発が進み飛躍的に処理が進んだ。
野辺山45m電波望遠鏡に大型装置を持ち込む上で、システムのデザインや作業工程、これらを整備するために必要な条件やトラブルシューティング等、詳細にわたり検討を進め文書化してチームメンバーに周知することが極めて重要であることを認識している。KaVA大型観測プログラムについても、データ処理・分析の遂行において装置開発に対するものと共通する問題意識が必要である。また、作業にあたる実働チームを編成し参加する学生の教育に資するために、具体的な作業内容とその目標の明示も必要である。雇用したプロジェクト研究員と共に協力して、このようなマネジメントの強化を図りたい。これらを通して、国立天文台水沢・野辺山及び韓国KVNとの連携をより固めて、着実に事業を進めたい。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 8件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 13件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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