研究課題
本研究は、2部構成になっており、最終的にこれらを一体化して実施していく計画である。(A)複数波長帯電波同時観測システムを、高感度を実現する野辺山45m電波 望遠鏡に構築する。(B)日韓VLBI事業(KaVA)及び東アジアVLBI観測網(EAVN)大型観測プログラムを推進し、晩期星からの質量放出の様子を反映する星周メーザー源の長期的振舞いを統計的に把握する。(A)においては、システムの骨幹を成し開発してきた大型周波数選択板ついて、開発すべき2種類の板について開発に成功した。 まだ13mm/7mm帯同時観測システムに限られるが、これについては、試験観測を経て期待通りの性能を持ち定常観測に使えることを確認し、単一鏡及びVLBI観測において一般共同利用科学観測に投入することができた。その1つの成果として、間欠的な質量放出する晩期星のSiO及びH2Oメーザー源の同時追跡観測を実施し、突発的に発生したと思われる超高速ジェットに付随したH2Oメーザーの発見につながった。(B)については、完了したKaVA大型観測プログラムのデータ解析を進めつつ、その成果を踏まえてEAVN大型観測プログラムの事業(EAVN Synthesis of Stellar Maser Animations=ESTEMA)を開始した。これは今後数年間かけて数天体について連続撮像観測を実施する計画である。この副次的な成果として、(C) VLBIでは撮像されたことのなかった振動基底状態(v=0)におけるSiOメーザー源のVLBI撮像に世界で初めて成功した。このメーザー放射が赤色超巨星からの双極的な恒星風に付随することから、このメーザーが大質量星形成領域と同じ仕組みで励起されることを明らかにした。
3: やや遅れている
13mm / 7mm帯同時観測システムの科学観測への公開とそれを使って科学的成果を挙げたことは特記すべきであろう。また、TZ受信機の修理が進み、来年度再搭載できる見通しが立ったことも大きい。しかし一方、新しく導入したVLBIバックエンド機器を用いた超広帯域観測が実現していない。これは、これに必要な遠隔運用を可能とする観測システム制御ネットワークの構築と制御プログラムの開発が遅れている為である。作業工程の細部まで開発チーム内でしっかり検討した上で(大学講義等の為に滞在期間が限られてしまう)現地作業に取り掛かる必要を再認識した。また、KaVA/EAVN観測で取得したデータの処理については、連続処理が実行できるスクリプトを完成させたものの、最適な電波合成像を得ることができる入力パラメータの組み合わせの絞りこみなどに手間取り、大量データの連続処理が期待通りには進められなかった。取得データをESTEMAチーム内での議論を重ねて分担して処理してそれぞれで科学的査読論文にまとめる方策を検討している。
今年10月以降、野辺山宇宙電波観測所の本館や共同利用宿舎ができなくなる状況で、45m鏡観測システムの立ち上げを実施していかなければならない。従って、来年度6月から9月の保守期間に集中的に観測所に出かけて、観測システムの整備と試験を急ピッチで進める予定である。また来年度は科研費事業の最終年度であり、丁度、日本天文学会欧文報告雑誌(PASJ)でVERAやVLBI観測に関する特別号の出版に向けて査読論文の提出が研究者コミュニティーの中で強く奨励されている。これら2つの重要課題をこなすべく、より多くの学生に作業や試験に参加してもらい装置の開発や立ち上げ、動作・性能検証に関する実地訓練の機会を多く提供し、年度後半で査読論文執筆に専念できるタイムラインで臨む予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://milkyway.sci.kagoshima-u.ac.jp/~imai/lab/