研究課題
188cm望遠鏡の分光ロボット望遠鏡化については、観測者が作成した観測手順書に沿って望遠鏡と分光装置が連携して動き、ハードウェア側の障害発生がなければ一晩の間には自動で観測が実施される自動キュー観測機能を、連携研究者や研究協力者とともに実用化した。さらに観測天体の選定や露出時間の設定、さらには天候判断など、キューの自動生成まで自律的に実行するロボット望遠鏡化の検討を進めた。高分散分光器HIDESの高安定化については、恒温恒湿設備の改造を行い恒温環境を整備した。また、大型光学定盤を取り入れ温度変動と震動に対する安定環境を整備した。一方、高感度化については、鏡類のコートを改善することで、約20%の総合効率の向上を獲得した。系外惑星探索で取得したデータの処理については、ロボット望遠鏡化を見据えた自動化の検討を進め、次年度には具体的に取り組める見通しとした。系外惑星探索は、約500星の巨星についてドップラー法探索を継続し、約50夜の観測を実施し、188cm望遠鏡の共同利用観測の終了を迎えた。その後、各方面の協議や協定の締結のため188cm望遠鏡は一旦の停止状態に入った。その間に研究成果を2編の査読論文として公表した。一つ目の論文では、トルコとロシアの研究者との国際共同研究により、KO型巨星に1.4木星質量という、巨星まわりで見つかっている中では最も軽い部類の伴天体の発見を報告した。二つ目の論文では、韓国とタイの研究者との国際共同研究により、3つのK型巨星のそれぞれに数木星質量の伴天体を一つずつ検出したこと、その3つともが離心率0.25前後の軌道を周回していることを報告した。
2: おおむね順調に進展している
当初目標通り、188cm望遠鏡と高分散分光器による系外惑星のドップラー探索の自動キュー観測を実現することができた。つまり、観測者が作成した観測手順書に沿って、一晩中自動でキュー観測が実行され、データが取得されていく機能を実用化した。さらに、観測手順書の作成や最終的な天候判断など、これまで人の介在を必要としてきた部分についても、自動で処理し、自律的に観測を進めるロボット望遠鏡化の検討を進めた。分光器の高安定化、高感度化の環境整備も進み、観測システムの総合効率を約20%向上させることができており、ドップラー法による系外惑星探索も概ねこれまでと同等規模で進めることができている。査読論文が2編出版されており、今後の出版の見通しも既にあり、概ね順調と言える。
当初の研究計画を概ね踏襲し、観測者が事前に観測天体リストを用意するだけで、人が立ち会わずとも、望遠鏡とドームと観測装置が一晩中連携して動作し、観測すべき天体や露出時間等を自律的に判断して目的天体や較正光源のスペクトルを取得し、一晩の観測を完了することのできるシステムの完成を目指す。また、取得された観測データの一次整約を自動化し、さらに視線速度解析の自動化まで踏み込むことを試みる。その情報を自律的な観測システムへ反映させることを狙う。そして、総合効率の改善された分光観測システムと、共同利用が終了し観測時間の大幅な追加が可能となったロボット化188cm望遠鏡を駆使して、かつてない大規模なドップラー法によるG型巨星における系外惑星探索を開始する。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Astronomy & Astrophysics
巻: 610 ページ: id.A3, 8pp
10.1051/0004-6361/201629185
巻: 608 ページ: id.A14, 8pp
10.1051/0004-6361/201731184