研究課題
188cm望遠鏡の分光ロボット望遠鏡化について、観測者が事前に目的天体のリストを用意すれば、人が立ち会わずとも、望遠鏡とドームと観測装置が連携して動作し、観測天体の選定、露出時間の決定、天候の判断、天候に伴う観測の一時停止と再開などを自律的に行い、目的天体や較正光源のスペクトルデータを取得し続け、一晩の観測を自動で完了することのできるシステムを稼働させることができた。高分散分光器HIDESについて、前年度に一旦分解したものを、安定化された環境の中で再構築し、環境の温度変動に対する検出器上でのスペクトル像移動の感受性を10分の1に低減させることができた。系外惑星探索で取得したデータの処理については、ロボット望遠鏡で日々取得される二次元スペクトル画像の生データから、一次元化されたスペクトルデータを取り出す一次処理の段階の自動化を進めることができた。系外惑星探索は、188cm望遠鏡の共同利用終了と高分散分光器の改造に伴い観測を一旦停止していたが、まず、前年度までに進めてきた約500星の巨星についてのドップラー法探索を再開し、約80夜の観測を実施した。研究成果を1編の査読論文として公表し、二つの巨星、24 Boo(G3 IV)とγ Lib(K0 III)の周りに惑星の存在を報告した。24 Booは金属量[Fe/H]=-0.77の巨星で、最小で木星の0.91倍の質量、公転周期30.4日の惑星が検出された。この星は現在知られている惑星を伴う恒星の中で最も金属量が少ないものの一つであることが分かった。γ Libは金属量[Fe/H]=-0.30の巨星である。この星は最小で木星の1.0倍と4.6倍の質量を持つ2つの惑星を伴い、2つ以上の惑星を持つ巨星の中では2番目に低い金属量を持つ。惑星の公転周期はそれぞれ415日と964日で、7:3の平均運動共鳴状態にあることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初目標通り、188cm望遠鏡と高分散分光器による系外惑星のドップラー探索について、観測天体の選定やキューの生成まで含めて自律的な自動キュー観測を実現することができた。つまり、観測者が目的天体リストを与えると、観測手順書を自動的に生成して、常に天候状態を監視し、必要に応じて観測を中断・再開しながら、自動的に夜明けまで観測を続けられる機能を達成することができた。また、取得された観測データの一次整約を自動的に実行する機能を実現する取り組みを進めることができた。分光器の再構築による高安定化も実現することができた。これらによりドップラー法による系外惑星探索を再開することができた。査読論文も1編出版されており、概ね順調と判断した。
当初の研究計画を概ね踏襲し、研究協力者とともに188cm望遠鏡のロボット化をさらに進める。観測者が事前に目的天体のリストを用意すれば、人が立ち会わずとも、望遠鏡とドームと観測装置が連携して動作し、自律的に判断して目的天体や較正光源のスペクトルデータを取得し、一晩の観測を完了するシステムの完成度をさらに上げる。また、研究協力者とともに取得されたデータの自動的な整約を実現し、さらに自動的に解析を進めるソフトウェアの開発に取り組む。このシステムによりG型巨星におけるドップラー法系外惑星探索を最大限展開する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 70 ページ: id.59, 16pp
10.1093/pasj/psy052