研究課題/領域番号 |
16H02170
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
高橋 忠幸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50183851)
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研究分担者 |
渡辺 伸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (60446599)
武田 伸一郎 沖縄科学技術大学院大学, 最先端医療機器開発ユニット, 研究員 (80553718)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ガンマ線検出器 / コンプトンカメラ / 電子飛跡追跡 / ガンマ線天文学 |
研究実績の概要 |
電子飛跡の追跡が可能で高速な半導体素子を用いた半導体コンプトンカメラを実現し,感度のギャップに埋もれて進展が妨げ られている数100keVから数MeVの領域でのガンマ線に革新をもたらすことを目的とした研究を進めている。本年度は,従来のSi/CdTeコンプトンカメラを優れた角度分解能とエネルギー分解能を生かし,非密封線源によるファントムを用いた画像再構成の研究,また,電子飛跡追跡のために我々が開発したSi-CMOSハイブリッド素子とCdTe両面ストリップ検出器を組み合わせた新しいコンプトンカメラの試作機を用いた研究を行なった, コンプトンコーンの重ね合わせ画像から元の分布を再構成するアルゴリズム開発するために,非密封線源を用いて立体ファントムを製作し,Si/CdTeコンプトンカメラを用いたSPECT装置を構成し,ファントムの周囲に回転させながら測定したデータからてトモグラフィ再構成を実施し,245keVのガンマ線を使って,3次元画像を得ることに成功した。Siセンサーの信号処理のために高速データ処理回路のハードウェアを完成させた。 電子飛跡を利用した試作Si/CdTeコンプトンカメラでは,反跳電子の方向情報を利用した完全コンプトン再構成の有効性を実証した。エネルギー分解能は662 keVでFWHM 7.4 keV,1173 keVで, 18 keV を,またARM ~1.7 deg(FWHM) @1275 keVの角度分解能を達成した。新開発のSi-CMOS素子では,300 keV以上の反跳電子に対して、反跳方向の情報を得ることができた。 反跳電子の情報を利用することで、コンプトン再構成イメージ中のノイズを劇的に減らすことができた。 将来のガンマ線天文学に向けた検討や,ガンマ線検出器のベースとなるCdTe半導体イメージャの性能向上をめざした実験を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンプトンカメラ,とりわけ我々が独自の技術として開発をつづけてきたSi/CdTeコンプトンカメラは,高いエネルギー分解能と角度分解能,さらに偏光観測能力を有するため,将来のMeVガンマ線観測において有望な検出器である。散乱体部分のSiセンサーにおいて散乱した電子の方向をしることができると,コンプトンコーンを一点に集約させることができるため,コーンの重なりによる視野内のノイズを軽減するばかりではなく,角度分解能の向上にもつながる。本研究では,試作センサーが十分な電子飛跡の追跡能力をもつこと,実際にCdTeイメージャと組み合わせることで,ドップラーブロードニングで決まる究極の性能を引き出せることの実証まで進んでいるため,順調に進んでいるといえる。さらにCMIOS-Siセンサーの信号処理を行うための高速データ処理回路のハードウェアを完成させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
試作した電子飛跡型Siセンサーの試験を継続する。CdTeイメージング素子とくみあわせて,電子トラッキングによるコンプトン再構成の実験を行うとともに小型化の設計を進める。電子飛跡の起点と方向を知るための機械学習を用いたアルゴリズムの研究を行う。有効面積を向上させるための厚型CdTe両面ストリップ検出器や,角度分解能を向上させるための60ミクロンピッチの高精度CdTe両面ストリップ検出器の開発を進める。広がった形状をもつ較正用線源や近傍におかれた線源などの様々な形状や配置の線源を用い,コンプトンカメラによる画像構成のアルゴリズムの研究を発展させる。高速でデータを取得するために開発したZynqチップを用いたデータ収集装置を応用したセンサー読み出しシステム構築をはかる。 ガンマ線領域まで放射がのびる高エネルギー天体に関して。すざく,チャンドラのほか,FermiやH.E.S.Sなどを用いて,多波長観測でのデータ解析や粒子加速機構の理論研究を行なう。超新星残骸や中性子星,ブラックホールによる粒子加速の理論的,観測的研究,超新星残骸の進化やブラックホールからのアウトフローなどの流体計算コードの開発を行う。将来の小型衛星や国際大型衛星をもちい,宇宙における加速原理を探求 できるような新しい高エネルギーミッションを検討する。
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