研究課題/領域番号 |
16H02171
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関口 仁子 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70373321)
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研究分担者 |
三木 謙二郎 東北大学, 理学研究科, 助教 (80727090)
伊藤 正俊 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 准教授 (30400435)
民井 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (20302804)
若狭 智嗣 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10311771)
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (50144530)
前田 幸重 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50452743)
酒井 英行 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 部長 (90030030)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 三体力 / 核力 / 少数系 / 偏極ヘリウム3 |
研究実績の概要 |
原子核物理学では、三体力を含めた核力による原子核・核物質の記述が進みつつある。特に、荷電スピン三重項三体力(T=3/2三体力)は、中性子過剰核や中性子星の性質を理解する上で注目されている。本研究では、陽子・ヘリウム3散乱の高精度測定と厳密理論計算との直接比較から、荷電スピンT=3/2三体力の定量的な議論を実現することを目指す。平成28年度は、T=3/2三体力に敏感であると理論的に予測されているヘリウム3の偏極分解能測定を実現するため、高偏極・高密度の偏極ヘリウム3標的の開発と、同標的によるビーム試験を開始した。偏極ヘリウム3標的に関しては、光ポンピング・スピン交換法による偏極効率を上げるためのレーザー光の周波数狭帯化を導入した。併せて高偏極ヘリウム3標的の制作実績を持つ高エネギー加速器研究機構や米国ジェファーソン研究所の専門家等を訪問し、技術指導を得るとともに、彼らとの共同研究体制を築いた。ビーム試験は、東北大サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにおいて実施した。制作した偏極標的セルを用いて70MeVにおける陽子・ヘリウム3散乱の測定を行った。散乱の非対称の測定が可能なことを確認し、前方角度の散乱に対して偏極分解能の導出に成功した。一方理論では、精度の高いカイラル有効場核力(5次のオーダーを考慮した核力)を用いて、入射エネルギー200MeV付近までの少数核子散乱系の厳密理論計算を実現するための研究が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
偏極ヘリウム3標的の開発においては専門家の協力を得て、高効率に光ポンピングを行う手法を進めることができた。また、現状の標的では偏極度はやや低いものの、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターで行ったビーム試験において、陽子・ヘリウム3散乱の測定を行い、偏極分解能の測定が実現可能であることを確かめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、偏極ヘリウム3標的に関しては、偏極標的の緩和時間を軽減する方法、また後方角度散乱測定を行うために、標的のガラスセルの厚さを調整する必要がある。並行して、陽子・ヘリウム3散乱における三体力効果の大きさをみつもるための微分断面積の測定を実施してゆく。
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