研究課題/領域番号 |
16H02173
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 均 東北大学, 理学研究科, 教授 (00333782)
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研究分担者 |
藤井 恵介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30181308)
栗原 良將 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50195559)
隅野 行成 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80260412)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トップクォーク / 電子陽電子コライダー |
研究実績の概要 |
しきい値領域における物理研究では、平成28年度に開始した測定器のフルシミュレーションによるトップクォーク運動量分布の解析のトップクォーク崩壊幅の抽出法を発展させた。この解析は、H28年度卒業の小澤清明君からH30年度卒業の江田優人君へと引き継がれた。理論面では、強い相互作用の結合定数αsの高精度決定のための新しい方法を開発し、これを応用してQCDポテンシャルを用いてつい相互作用の反応係数を良い精度で決めた。この応用については今後の課題となるのでのちの項目で述べる。また、しきい値領域の理論的不確定性がコントロールされ、それは実験家と共有された。
オープントップ領域における物理研究では、重心エネルギー500 GeVにおけるトップクォークの対生成におけるトップの異常結合解析において、フルシミュレーションを使ってInitial-state radiationやbeamstrahlungを加えた解析を行ったが、測定器分解能の効果や背景事象を適切に考慮するためには、「行列要素法」のみではなく、maximum likelihoodを適用することが望ましいことが判明した。この解析は佐藤瑶君の修士論文となったが、その研究の過程で3度フランスに渡り、それぞれ一ヶ月間共同研究を行った。また、フランスからも教授一人が東北大学を3週間にわたっで訪問し、共同研究をおこなった。加えて、分担者の隅野はParticle Data Groupのトップクォーク部門の担当として現在のトップクォークのあらゆる実験データのコンパイルを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
しきい値領域では、トップクォークの再構成と運動量測定の手法がほぼ確立し修士論文として一応の完成を見たがそれ解析はもう一人の修士の学生にスムースに引き継がれた。
オップントップ領域ではトップクォークの異常結合の解析が「行列要素法」を使った解析としての完成をみた。その改良版として、Maximum likelihoodをつかって測定器の分解能などの効果や背景事象を考慮に入れる解析を始め、その目処がたった。海外の研究者との共同研究も緊密に行われ、特にフランスのオルセイ研究所のRoman Poeschl教授(この研究計画の共同研究者)及び「行列要素法」をトップクォーク対生成に初めて適用したFrancois LeDiberder教授との共同研究は、修士の学生が3度にわたりオルセイ研究所を訪問してそれぞれ1ヶ月間集中的に共同研究するなど、実り多いものとなった。この経験がきっかけとなって、Roman Poeschl教授が3週間にわたって3月に東北大学に滞在することとなり、トップクォーク再構成の研究をさらもう一人の学生(奥川祐元)と始めた。
理論的にも、しきい値領域の理論的不確定性がコントロールされるに至っただけでなく、QCD反応係数の抽出やヒッグスポータルモデルの探索におけるトップクォークを使った解析方法の開発など、当初予定されなかった成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
しきい値領域では、測定器の現実的なシミュレーション(フルシミュレーション)を使ったトップクォーク崩壊幅の抽出方法を完成し、強い相互作用の反応係数や、トップ-ヒッグス反応係数など、トップクォーク崩壊幅以外のパラメータに拡張する。 オープントップ領域では、まずMaximum likelihoodをつかって測定器の分解能などの効果や背景事象を考慮に入れる解析を完成し、その成果を論文としてまとめる。
理論面では、ILCでトップクォークの質量を求めるために重要となるQCDポテンシャルの理論的理解を進め、論文として完成する。ポータルヒッグス型のモデルお探索のためのトップクォークを用いた検出方法の開発を継続する。オープントップ領域において、トップ対生成の標準理論に基づく散乱断面積の高精度理論計算を目指して、電弱相互作用・強い相互作用の高次補正計算を継続する。特に大きな補正を与える、始状態光子放出補正について研究を行う。
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