研究課題/領域番号 |
16H02174
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石原 安野 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (40568929)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートリノ検出器 / 宇宙線 |
研究実績の概要 |
本研究期間を通して開発してきた新型光検出器D-Eggは、前年度までに南極点深氷河に埋設されIceCube検出器として稼働することが国際審査により正式に決定した。しかし、いくつかの解決すべき課題が残っていた。主に電子部品の選定において、より壊れにくいスペックのものを使用すること、読出し基板からの電気ノイズの理解、そして性能の安定性を実際に通常想定よりも高負荷をかけ問題が生じないことを確かめることなどである。今年度はこれらの課題をひとつづつ解決し、国際チームからなる審査会議を経て南極氷河に埋設可能なモデルを完成させ、12台のプロトタイプモデルを完成させた。これらのモデルは、今後南極点に埋設されることになる。 本年度は読出し基板ノイズの理解を進め、低温においても基板動作が安定していることや、デジタイザーの設定を最適化することの重要性を確かめた。また、これらの性能試験は、基板からの信号をehternetで直接読み出して行うと共に、南極点表面に実際に設置されているDAQシステムである“fieldhub”の小型版“mini-fieldhub”を通し2本のワイヤペアのみを用い電源も供給しながらの通信試験を行った。このことからより南極点での動作環境により近い状態でのデータ取得を行い、各モジュールの消費電力がわずか4.5Wであることなど、南極氷河中で必要とされる能力の検証を行いそれを満たしていることを確認した。 較正装置としての新型モジュール性能向上のため、モジュール内に設置するLEDのデザイン研究も行い、新たな高輝度高速LED(10ns)の開発も行い、検出器内部から南極氷河特性を調べるための光源を設置しその結果得られる感度をGEANT4シミュレーションにより精査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本来当研究提案書ではプロトタイプ光検出器モジュール10台の製造を予定していたが、より厳しい審査を経た光検出器12台の製造に成功した。その性能は次世代望遠鏡IceCube-Gen2の要求値を満たすものであるということが、様々な試験を行い確かめられており、今後の発展につながる重要な基盤装置であるということがコラボレーション内でも評価されている。今後も引き続き実験室内の計測をすすめ、南極点深氷河下での現実的な性能を精査する。また、さらなるニュートリノ望遠鏡の発展にむけて、現状のモデルを基礎としつつも、新たな性能を引き出すための研究、光検出器の改良を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに新型光検出器D-Eggのデザインが完成した。このモジュールは、Gen2-Phase1に最適化し南極点深氷河中の光の伝搬特性に感度を持つようにデザインされてきた。今後は、さらなる大規模製造に向けて、より高エネルギーのニュートリノに感度を持つように、さらなる感度向上を目指すと共に、読出し基板のダイナミックレンジを広げるなどの工夫を進めていく。実験室内での測定による検出器理解を進め、その結果をシミュレーションに組み入れて解析の系統誤差を減少に向けた研究を進める。
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