研究課題/領域番号 |
16H02177
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下浦 享 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10170995)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RIビーム / 中性子多体系 / 荷電交換反応 / 質量欠損核分光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、二重荷電交換反応4He(8He,8Be)の質量欠損スペクトルに4事象発見されたテトラ中性子共鳴の候補の検証を行うことである。 このために、運動学的に全く同じだが、統計量を増やし、分解能を高めた4He(8He,8Be)4n 反応の測定を行った。実験は理化学研究所RIBF施設の高分解能ビームラインおよびSHARAQ磁気分析器を用い、核子あたり230MeVの18Oビームの核破砕反応で生成された核子あたり186MeVの8Heビームを液体ヘリウム標的に照射し、8Beから崩壊した2つのα粒子をSHARAQで同時測定するという手法で行われた。3MHzを超える大強度8Heビームの測定のため、冗長性の高い飛跡検出器を用いることで、偶然同時計数の排除と高い飛跡再構成効率の両立をはかった。また、質量欠損の較正を高めるために、ビームと反応後の粒子の磁気剛性がほとんど同じ、1H(3H,3He)n 反応の測定を核子あたり310MeVの3Hビームを用いて行い、100 keV程度の精度が得られることがわかった。 現在、偶然同時計数などのバックグラウンドの識別など実験データの解析が進行中である。 中性子過剰核の芯原子核と標的との準弾性散乱および準非弾性散乱を用いたノックアウト反応実験の準備をすすめた。多中性子による事象を1つの中性子によるクロストークから識別するために、中性子により反跳された陽子の飛跡に感度をもつ検出器を開発している。また、この実験で用いるための真空散乱槽を製作した。 国際会議、国際ワークショップで本研究について招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な実験の1つである二重荷電交換反応4He(8He,8Be)の測定が予定通り遂行された。改良された検出器システムはほぼ予定通り動作し、また、1H(3H,3He)n反応の測定では、想定通りのスペクトルが得られ、予定通り100keV程度でエネルギー較正ができることが明らかになった。解析は現在進行中であるが、大強度ビームに起因する偶然同時計数などのバックグラウンドの識別がすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
二重荷電交換反応4He(8He,8Be)の測定データの解析をすすめ、テトラ中性子共鳴の候補の検証を行う。冗長性の高い飛跡検出器を用いたことで、解析が煩雑になっているが、より信頼度の高いデータが得られると期待している。
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