研究課題
本研究では、中性子過剰核の核表面に存在すると予言されている強く相関した2中性子系「ダイニュートロン」と、その放出による核崩壊過程「ダイニュートロン崩壊」の探索を目指している。ダイニュートロンの存在はこれまで実験的に確立しておらず、観測されれば中性子過剰核の重要な特性の一つとなることから、注目されている。本研究では、ダイニュートロンの存在が理論的に予言されている非束縛中性子過剰核である酸素26(26O)を、不安定核反応によって生成し、その崩壊過程を、1)スピン相関、2)空間的相関の両方を観測することにより調べる。予定している実験では、不安定核研究の世界的拠点理研RIビームファクトリー(RIBF)において、核子当たり約250MeVのフッ素27(27F)の一陽子分離反応を用いて26Oを生成する。本予算で建設する「2中性子偏極度計」を用い、26Oより放出される2個の中性子の1)スピン相関と2)空間的相関を観測する。本実験により核表面ダイニュートロンの状態が特定できると期待されている。29年度の計画では、i)2中性子偏極度計のプロトタイプのテスト実験を大阪大学核物理研究センターで得られる250MeVの準単色中性子ビームを用いて行い、同検出器の検出効率、分解能を求め、反跳陽子の飛跡解析法を確立させること、ii)2中性子偏極度計本機の仕様を決定し、その建設を進めること、また、宇宙線を用いたオフラインでのテスト実験を行うこと、そして、iii)新たに導入する信号処理用高集積回路のテストを行い、本機に実装すること、としていた。i)については核物理研究センター側のマシンタイムの都合から、実験が実施されなかった(H30年度に行われる見込み)。ii)についてはほぼ仕様を固め、光電子増倍管とシンチレーターの購入を進めた。iii)については回路のテストを行い、今後の方針を決めた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の当初の計画では、i)2中性子偏極度計のプロトタイプのテスト実験を大阪大学核物理研究センターで得られる250MeVの準単色中性子ビームを用いて行い、同検出器の検出効率、分解能を求め、反跳陽子の飛跡解析法を確立させること、ii)2中性子偏極度計(本機)の仕様を決定し、その建設を進めること、また、宇宙線を用いたオフラインでのテスト実験を行うこと、そしてiii)新たに導入する信号処理用高集積回路のテストを行い、本機に実装すること、であった。i)については、阪大核物理研究センターで予定していた実験が、同施設の更新工事などもあって制限され、実施できなかった(H30年度に行われる見込み)。ii)については仕様をほぼ固め、光電子増倍管とシンチレーターの購入をし、建設を進めた。iii)については回路のテストを行ったが、この回路系の他、従来型のシステム、および、中間的なシステムの検討も必要との結論になった。i)の実験が実施できなかったものの、中性子偏極度計の建設や反跳陽子の飛跡シミュレーションの実施等は順調に実行されており、今後の本実験計画には特に変更がないことから、おおむね順調に進んでいるとした。
H30年度は、大阪大学核物理研究センターでのテスト実験を着実に行う。同施設の担当者からは本テスト実験のマシンタイムが取得できる見込みであることが確認されている。並行して、2中性子偏極度計の建設を進め、H30年度中に完成させる。信号処理用回路については、i)従来型のシステムに加えて、ii)高集積型回路、および、iii)中間的な集積回路が検討されている。iii)についてはその準備が整っており、順次開始する。来年度には、26Oの実験を理研で実施することを計画しており、そこでのデータ取得、またその後のデータ解析を順調に進めるため、今年度はさまざまな本実験を想定したシミュレーションを行う。また、上記のテスト実験の解析を進め、本実験への準備を万全なものとする。こうして、H31年度に本実験を行い、データ解析の後、ダイニュートロンに関する情報を引き出す。得られる結果は国際学術誌や国内外の学会において発表する。本研究で得られる、新しい2中性子の検出法についても論文発表、学会発表を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 15件、 招待講演 16件) 備考 (1件)
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