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2017 年度 実績報告書

アクティブ標的を用いたS=-2ハイパー核の精密分光

研究課題

研究課題/領域番号 16H02186
研究機関京都大学

研究代表者

永江 知文  京都大学, 理学研究科, 教授 (50198298)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードハイパー核 / ストレンジネス / J-PARC
研究実績の概要

ストレンジネス量子数-2をもつ新しいハイパー核として、本研究ではバリオン1粒子でストレンジネス-2をもつグザイ粒子に着目してグザイハイパー核の分光を目指しいている。本研究では、2 MeV(FWHM)という高エネルギー分解能をもつ磁気スペクトロメーターS-2Sを用いて、(K-,K+)反応による精密分光を目指す。
一方で、グザイハイパー核の生成断面積は約50 nb/srと非常に小さいので、上記の測定では、充分な収量を得ることも重要な条件となる。実験標的の厚さを厚くすればグザイハイパー核の収量を増やすことが可能であるが、標的中でのエネルギー損失のふらつきも大きくなり、エネルギー分解能を悪化させる。そこで、本研究では、標的中でのエネルギー損失の大きさを一事象毎に測定し、これを補正することにより、厚い標的を使ってもエネルギー分解能を損なわないようなアクティブ標的を開発している。
本年度はシンチレーチングファイバー1本がもつエネルギー分解能を65 MeVと295 MeVの2つのエネルギーの陽子ビームをファイバーに照射してテストした。断面が円形のものと四角形のもの、また、クラッドがシングルのものと多層からなるものなどのいくつかの組み合わせにおいて、エネルギー分解能を評価した。その結果、目標としていた10%のエネルギー分解能を達成することに成功した。また、LEDを同時に光らせて長期安定性等も試験した結果、MPPC及び読み出し回路において安定な動作が確認出来た。
加えて、本年度には理論の人々と一緒になってグザイ粒子と原子核との相互作用について、何が不定性をもっており、どういう実験結果が必要とされているのかについても検討を行った。最新の相互作用模型では、グザイ粒子の核内での三体力効果が大きく影響する可能性があることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シンチレーションファイバー1本当たりのエネルギー分解能を、大阪大学核物理研究センターのグランドライデン・スペクトロメーターを利用して評価を行った。65 MeVと295 MeVの2つのエネルギーにおいて陽子ビームを1本のファイバーに通過させ、磁気スペクトロメーターで測定したエネルギー損失の大きさと、ファイバーで得られたシンチレーション光の光量との関係を求めることに成功した。その結果、アクティブ標的の厚さは8.2 g/cm2まで厚くしても、エネルギー分解能は2 MeV (FWHM)を達成できることが示された。

今後の研究の推進方策

ファイバー1本あたりの性能が評価できたので、次のステップとしては、約100本程度のファイバーバンドルを試作して、これによるエネルギー分解能の評価を行う。高エネルギーの電子ビームを用いて試験を行う予定である。そのためのファイバーバンドルの固定治具の設計・製作をまず行う必要がある。センサー部のMPPCと読み出し回路のEASIROCモジュールとの結合をしっかりとしなければならない。機械的なファイバーの取り付け精度を満たす必要がある。また、エネルギー分解能には、入射K中間子ビームの磁気スペクトロメーーターによる運動量分解能も無視できない寄与をもつことが分かってきたので、総合的な性能確保のための運動量較正の方法についても検討する必要がある。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] INFN Torino(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      INFN Torino
  • [国際共同研究] JINR Dubna(ロシア連邦)

    • 国名
      ロシア連邦
    • 外国機関名
      JINR Dubna
  • [国際共同研究] Korea University/Seoul National University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Korea University/Seoul National University
  • [国際共同研究] Hampton University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Hampton University
  • [雑誌論文] Spectroscopy of Nuclei with Multi-Strangeness by Using New S-2S Spectrometer at J-PARC2017

    • 著者名/発表者名
      Gogami Toshiyuki、Nagae Tomofumi、他50名
    • 雑誌名

      JPS Conference Proceedings

      巻: 18 ページ: 011031-1-6

    • DOI

      10.7566/JPSCP.18.011031

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Construction Status of a New Spectrometer “S-2S” for Spectroscopy of Multi-Strangeness Systems at J-PARC2017

    • 著者名/発表者名
      Kanatsuki Shunsuke、Amano Nobuaki、Ekawa Hiroyuki、Gogami Toshiyuki、Hirose Erina、Ichikawa Yudai、Kato Seigo、Moritsu Manabu、Nagae Tomofumi、Takahashi Hitoshi、Takahashi Toshiyuki、Takenaka Kohei
    • 雑誌名

      JPS Conference Proceedings

      巻: 17 ページ: 033008-1-2

    • DOI

      10.7566/JPSCP.17.033008

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] S-2S D1 電磁石の磁場測定 (2)2017

    • 著者名/発表者名
      七村拓野、永江知文、金築俊輔、市川真也、越川亜美、他5名
    • 学会等名
      日本物理学会 2017年秋季大会
  • [学会発表] (K-,K+)反応を用いたΞハイパー核分光実験J-PARC E05 pilot run (3)2017

    • 著者名/発表者名
      金築俊輔 for the J-PARC E05 Collaboration
    • 学会等名
      日本物理学会 2017年秋季大会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-09-13  

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