研究実績の概要 |
シンチレーティングファイバー300本から成るアクティブ標的を開発し、陽電子ビームを用いた試験を行った。有効面積は、本実験で必要な幅10cm x 高さ5 cmと同じ領域をカバーしている。これをビーム軸方向に6層組み上げて、各ファイバーの設置精度、ファイバー毎の発光量のばらつき、ビームの入射角度や入射位置を変えながら、これらの依存性を調べた。実験は、東北大学電子光理学研究センターのGeV-γビームラインにおいて800 MeV/cの陽電子ビームを利用して行った。ファイバーの読み出しは、本実験と同じMPPC光検出器とVME-EASIROCモジュールの組み合わせでデータ取得を行い、また、オンラインデータ取得系もJ-PARCで使用予定のシステムと同じものを使って総合試験を行った。 ファイバーの外径3 mmのばらつきは実測で+/-50ミクロン程度であり、ファイバーの取り付け治具の工作精度も目標どおり達成できていることを確認した。ビームを使って各ファイバー位置のズレを調べたところ100ミクロン以内で位置較正ができることを確認した。検出効率は一部に低い効率のファイバーが存在していたが概ね96%程度あることが分かった。光コンタクト等の改善を図っている。多層ファイバー間の相関を利用した飛跡認識のアルゴリズムについても開発を進めることができた。 これと並行して、炭素標的を使って以前に取得した(K-,K+)反応の実験データの解析を進めた。この実験ではグザイ・ハイパー核の質量分解能として6 MeV(FWHM)程度が達成されており、本研究で目指している2 MeVの分解能には及ばないものの、これまでで最高の分解能のデータである。このデータ解析から、グザイ・ハイパー核の束縛状態とみられる信号が観測され、束縛エネルギーは5 MeV程度であることが分かった。
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