研究課題/領域番号 |
16H02188
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野海 博之 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10222192)
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研究分担者 |
石川 貴嗣 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (40400220)
白鳥 昂太郎 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (70610294)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | チャームバリオン / チャームハドロン / ダイクォーク / 重いクォーク / 大強度ビーム |
研究実績の概要 |
本研究課題では、J-PARCの高運動量高分解能大強度二次ビームを用いた欠損質量法によるチャームバリオンの新しい分光研究を切り拓くため、基幹装置となる大立体角汎用分析装置を開発する。本年度は、主に、以下の項目について研究を進めた。 1)前年度に引き続きてシンチレーションファイバートラッカー(SFT)の開発を行った。1㎜φのファイバーを数本束ね、XUVに交差させた試作機について、電子ビームを用いて性能試験を行い、大強度ビーム環境下でも動作することが確認できた。 2)各検出器の時間基準となるタイムミング検出器として、応答の速いチェレンコフ検出器を開発した。ビームによる性能試験で50psの高い時間分解能を達成した。 3)前年度に整備したPCファームを用いた高効率ストリーミング型データ収集システムの開発を進めるためのテストベンチとストリーミング型データ収集モードに対応した高速データ処理機能を内蔵する電子回路(FPGAを搭載したユニバーサルボード上に開発された電子回路)を用いて、電子ビームによる最小限の検出器(SFT)からのデータを読出し記録する試験を行い、1Gbpsの高いデータ通信量までロスなくデータを収集し、ハードディスクに記録することができた。1Gbpsはデータ収集システムの限界ではなく、用いたネットワーク通信プロトコルの上限速度であって、システムの並列拡張性により克服可能である。 4)大立体角高分解能飛跡検出器として大型の多線式ドリフトチェンバーの設計を進めた。大強度のビーム部の通る部分の不感領域化を設計に取り入れるためのテストチェンバーとして既存のチャンバーを整備し、ビームを用いた試験を行った。検出器ガスとして不燃性のArとCO2の混合ガスを試験したが、大強度ビーム化での最適な動作条件がうまく見い出すことができず、大型ドリフトチェンバーの設計を慎重に進める必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)前年度に製作した試作機を使い、大強度の電子ビームを用いて性能試験を行い、問題なく動作することを確認できた。 2)各検出器の時間基準となるタイミング検出器を開発し、ビーム試験を行って満足すべき高い時間分解能(50ps)を達成した。 3)大強度ビームを用いる実験のため、PCファームを用いたデータストリーミング型高速データ収集システムの開発は肝である。今年度は、ストリーミング方式のデータ収集にマッチしたデータ読出しー送り出し電子回路をFPGAを搭載したユニバーサルボード上に整備し、最小限ではあったが、実際の検出器(FT試作機)と開発したデータ収集ソフトウエアの実証試験に成功した。 以上については概ね当初の計画に沿って進展していると考えている。一方、 4)多線式ドリフトチェンバーについては、設計を慎重に進める必要があったため、次年度に製作を先送りした。 このことについては、当初の計画よりやや遅れることとなったが、大きな問題はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
J-PARCの高運動量高分解能大強度二次ビームを用いた欠損質量法によるチャームバリオンの新しい分光研究を切り拓くため、基幹装置となる大立体角汎用分析装置として開発した検出器を総合して研究をまとめる。 1)高速タイミング検出器、シンチレーションファイバートラッカーを組み合わせ、大強度ビームを用いた総合試験により検出器性能を確認する。 2)大立体角高分解能飛跡検出器として大型の多線式ドリフトチェンバーの製作を行う。 3)PCファームを用いた高効率ストリーミング型データ収集システムについて、より実際の実験条件に近い環境で、実用レベルの性能を確認する。
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