研究課題/領域番号 |
16H02197
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
上坂 友洋 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60322020)
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研究分担者 |
板橋 健太 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30322093)
矢向 謙太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50361572)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二重ガモフテラー巨大共鳴 / 二重ベータ崩壊 / 荷電交換反応 / スピン・アイソスピン応答 / RIビームファクトリー / 分散整合イオン光学 |
研究実績の概要 |
本研究では、重イオン二重荷電交換反応を用いて、二重ベータ崩壊等で重要な役割を果たす原子核の二重ガモフテラー遷移強度の決定を行う。本研究において、RIビームファクトリーBigRIPSをスペクトロメータとして用いる実験セットアップの高度化が最重要課題であり、平成28ー29年度に実施した焦点面検出器の整備と性能評価に引き続き、平成30年度は分散整合イオン光学、及びその高度化を行った。 一般的にサイクロトロンから供給されるビームは0.1%程度の運動量広がりを持っており、本研究で目指す0.03%の分解能を達成するためには、このビームの運動量広がりの効果をキャンセルしなければならない。これを実現するのが分散整合という技術である。この方法は大変有用な技術であるが、ビームライン電磁石の精密な設定をする必要があるため、その調整には高い技術を要する。これまで上記システムはパイオニック原子の分光実験に使われてきたが、その際も分散整合を完全に調整することはできず、それが設計通りの分解能を達成できない原因の一つとなっていた。 本年度、以下の性質を有する新しい分散整合イオン光学の設計を行った。1) 二重ガモフテラー巨大共鳴探索とパイオニック原子分光の両実験条件での分散整合を達成できる。2) 少ない数の電磁石の調整により、標的上で二重フォーカス及び分散整合条件の実現が可能である。更に、高い放射線量のためアクセスが難しい標的位置に検出器を置くことなく、アクセスが容易な標的下流に用意したアクロマティック(分散無)焦点面と分散焦点面での軌道情報から標的上での粒子軌道・エネルギーを再構築し、更にそれを利用してイオン光学調整を実現する手法を考案した。RIBFで加速された18Oビームを用いて、この手法の原理実証試験を行い、極めて効率的かつ高精度でイオン光学調整ができることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたように、焦点面検出器の整備が完了し、分散整合イオン光学の設計と調整法の確率が終了した。 RIビームファクトリーにて、大強度12Cビームが加速されれば実験実施ができる状況まで来ている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に実験遂行のための準備は整い、後は加速器からのビーム供給を待つ段階に入った。現在大強度12Cビーム加速に用いる線形加速器の一部がアップグレード中であるが、今年度中には加速が始まる見込みである。実験遂行に向けて最終準備を行う。 本研究計画がきっかけとなって二重ガモフ・テラー巨大共鳴の理論研究が活発化しつつある。予備研究の結果を含めて、二重ガモフ・テラー巨大共鳴とニュートリノレス二重ベータ崩壊の核行列要素との関係を議論し、本研究で行う実験から、原子核のスピン・アイソスピン応答、ニュートリノレス二重ベータ崩壊の核行列要素について重要な帰結が得られるよう、理論研究者との議論を進める。
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