重イオン二重荷電交換反応により二重ガモフ・テラー巨大共鳴を探索する本研究では、RIビームファクトリーBigRIPS装置を磁気分析装置として用いる上で必要となるイオン光学手法の開発と、焦点面検出器の開発を進めて来た。主要部分は令和元年度までで完了していたが、令和二年度はコロナウイルス蔓延のためRIビームファクトリーの運転計画が大きく変更となり、当該実験は実施されないこととなった。そのため、令和三年度以降の実験実施に向けて、イオン光学調整手法と焦点面検出器の最終調整を行った。 イオン光学調整法の開発では、検出器を置くことの出来ない散乱標的位置でのビーム位相空間分布を、BigRIPS焦点面でのビーム軌道と輸送行列を用いてトレースバックすることにより調整する方法を確立してきた。今年度はこれをより進め、散乱標的位置より上流まで遡ったトレースバックを行ない、サイクロトロン取り出し位置及び中間焦点でのビーム位相空間分布を決定することに成功した。これらの知見を基に、より効率的な分散整合イオン光学調整方法を策定した。 筑波大学6MVタンデム加速器施設において、焦点面検出器として用いる低圧動作型多芯線型ドリフトチェンバーのテストを行った。テストの結果本ドリフトチェンバーで採用した3面交替構造により、検出効率の一様性が向上することが明らかとなった。この一様性改善により、本実験で得られるスペクトルへのマイクロ構造の影響を減少することができる。 以上の準備状況を踏まえた上で、本実験のビームタイム実施要求を出した結果、令和3年5月にビームタイムが割り当てられることとなった。
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