研究課題/領域番号 |
16H02198
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
玉川 徹 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 主任研究員 (20333312)
|
研究分担者 |
水野 恒史 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (20403579)
榎戸 輝揚 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20748123)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | X線偏光計の開発 / マグネター観測 |
研究実績の概要 |
衛星搭載に向け、光電子飛跡追跡型のX線偏光計開発を行なった。2016年7月に米国航空宇宙局 (NASA) ゴダード宇宙飛行センターと共同で、米国内の長尺X線ビームラインを使い較正試験を実施した。その結果、日本から提供しているガス電子増幅フォイル (GEM) は想定通りの動作をし、X線偏光計も当初想定した性能が得られることを確認した。 2017年1月に米国のX線偏光観測衛星計画に変更があり、これまで我々が想定してきた PRAXyS (Polarimeter for Relativistic Astrophysical X-ray Sources) ではなく、NASAマーシャル宇宙飛行センターが主導するIXPE (Imaging X-ray Polarimeter Explorer) 衛星が打ち上げられることになった。我々日本グループもそれに合わせて、GEM の設計変更、改良、追加試験を実施した。2021年4月の打ち上げに向け、フライト品の製作手順を確立し、試作品の性能評価により宇宙利用に問題が生じないことを確認した。 X線天文衛星「ひとみ」が事故により運用を断念したことで、軟ガンマ線検出器による偏光観測の機会は失われてしまったが、わずかに得られたカニ星雲のデータにより、低統計ではあるが偏光観測の有意なデモンストレーションをすることができた。 2017年6月にゴダード宇宙飛行センターが開発した、宇宙ステーション搭載X線観測装置 NICER (Neutron star Interior Composition ExploreR) が無事に打ち上げられ、初期観測を開始した。運用は順調で、想定通りの性能が出ていることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国が主導するX線偏光観測衛星計画が、当初予定していたPRAXyS衛星からIXPE衛星へ変更となったのは予定外であった。しかし、我々のハードウェア提供の役割は継続され、その貢献に対して、観測天体選定権や全てのデータへのアクセス権を確保した。偏光計衛星の打ち上げ予定も当初から大きく変化しておらず、装置の製作や較正スケジュールも、当初の計画から変化していない。ハードウェアデザインが変更になったことで、追加試験等が増えたことは事実だが、研究計画に沿って順調に進んでおり、現時点では遅延は発生していない。マグネターの軟X線スペクトル観測については、「ひとみ」衛星のカロリーメーターを使うことはできなくなったのは予定外であるが、それと相補的な、高計数率で光子統計を稼ぐことができるNICERが無事に打ち上がり、マグネター等の天体観測を開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の目的通り、X線偏光観測衛星を実現し、世界初のマグネターの偏光観測を目指す。具体的には2021年3月に打ち上げ予定のIXPE衛星に対して、ガス電子増幅フォイル、ならびに、X線偏光計のフライト品を製作し、その較正試験を行う。それと並行して、IXPEチーム全体のサイエンス検討に参加し、観測天体の提案を行う。 同時に、NICERによるマグネターの高光子統計観測を継続することで、回転フェーズごとの光度曲線のモデリング、陽子サイクロトロン等の吸収構造の証拠発見等をめざす。これにより、マグネターの強磁場中性子星仮説の観測による実証をめざす。
|