研究課題
申請者らが開発した液滴エピタキシー法による格子整合系量子ドットの自己成長は,基板と量子ドットの格子定数が等しいので,内部応力によるピエゾ電場が生じないという極めてすぐれた特徴をもつ。また,構造歪みを伴わないことから,高い空間対称性をもつ量子ドットの作製が可能である。窒素ペア等電子トラップに捕捉された励起子では,試料構造の均一性を反映して50μeV以下の極めて小さな不均一幅が実現できる。本研究では,液滴エピタキシー法による高対称GaAs量子ドットとδドープで作製する窒素ペア等電子トラップについて,高効率・高忠実な単一光子発生と量子もつれ合い光子対発生の実現を第1の目的とする。また,新しい材料系の開発による非古典光発生の波長領域の拡大を第2の目的とする。平成28年度は,①配置間相互作用の方法による閉じ込め励起子の電子状態の理論解析,②フォトニック結晶共振器の作製とパーセル効果による発光促進,③高対称基板面を利用した高対称量子ドットの作製,④新規材料の開発による波長拡大,および,⑤精緻な光子相関測定による単一光子発生ともつれ合い光子対発生の特性解析を目標として研究を進め,以下の成果を得た。①これまで実現が難しかった励起子アハラノフ・ボーム効果について,配置間相互作用の方法による精密な理論解析によって,これを実現する試料構造を発見,②フォトニック結晶共振器を作製して,窒素ペア等電子トラップの励起子の発光促進を実現,③(111)面上の高対称GaAs量子ドットについて,磁気光学測定により超微細相互作用の大きさを決定,④InP(111)A基板上にInAs量子ドットの作製に成功し,高対称量子ドットの発光波長を1.55μm帯(通信波長帯)へ拡張,⑤従来の光励起型に加えて,電流注入型素子の評価を目指して専用の光子相関測定装置を製作。
1: 当初の計画以上に進展している
平成28年度の研究目標がすべて達成できたことに加えて,典型的な量子現象の一つでありながら,従来,実現が難しかった励起子アハラノフ・ボーム効果について,その困難の原因がクーロン相互作用による電子・ホール対の混成であることを理論解析で解明した。さらに,配置間相互作用の方法を用いた精密な数値解析によって,この困難が回避できる試料構造を発見したことから,将来の実証実験の見通しが得られた。
平成29年度は,平成28年度に開始した,①配置間相互作用の方法による閉じ込め励起子の電子状態の理論解析,②パーセル効果を利用した発光促進による,電子系の位相緩和と無輻射遷移の相対的な低減,③高対称基板面を利用した高対称量子ドットの作製,④精密な光子相関測定による特性解析を進めるとともに,⑤もつれ合い忠実度の定量的な理論解析,⑥窒素ペア等電子トラップに捕捉された励起子の安定化,⑦電流励起単一光子・もつれ合い光子対発生の検討を開始する。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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