研究課題
申請者らが開発した液滴エピタキシー法による格子整合系量子ドットの自己成長は,基板と量子ドットの格子定数が等しいので,内部応力によるピエゾ電場が生じないという極めてすぐれた特徴をもつ。また,構造歪みを伴わないことから,高い空間対称性をもつ量子ドットの作製が可能である。窒素ペア等電子トラップに捕捉された励起子では,試料構造の均一性を反映して50μeV以下の極めて小さな不均一幅が実現できる。本研究では,液滴エピタキシー法による高対称GaAs量子ドットとδドープで作製する窒素ペア等電子トラップについて,高効率・高忠実な単一光子発生と量子もつれ合い光子対発生の実現を第1の目的とする。また,新しい材料系の開発による非古典光発生の波長領域の拡大を第2の目的とする。平成29年度は,①配置間相互作用の方法による閉じ込め励起子の電子状態の理論解析,②高対称基板面を利用した高対称量子ドットの作製,③電流励起単一光子・もつれ合い光子対発生などを目標として研究を進め,以下の成果を得た。①昨年度に見出した量子ドット-量子リング結合系について,配置間相互作用の方法による理論解析で,励起子アハラノフ・ボーム効果に特有な磁場印加による発光波長と発光強度の変化を正確に算出するとともに,試料作製にも成功,②昨年度に作製に成功したInAlAs/InP(111)A基板上のInAs量子ドットについて,InAs下地層を利用する等,作製条件を最適化,③量子もつれ合い光子対発生について,高対称GaAs量子ドットを含むPN接合から成る電流励起型試料を作製。これらに加えて,④化学合成で作製したCdSxSe1-xナノプレートについてk・p摂動法による励起子遷移エネルギーの解析を行って,実測値と良い一致を得るなど,当初計画に無かった成果も得られた。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度までの研究成果によって,本研究の最終目標達成の目途がほぼ得られたことに加え,典型的な量子現象の一つでありながら,従来,実現が難しかった励起子アハラノフ・ボーム効果について,その困難の原因がクーロン相互作用による電子・ホール対の混成であることを理論解析で解明したこと,また,配置間相互作用の方法を用いた精密な数値解析によって,この困難が回避できる試料構造を発見したこと,さらに,CdSxSe1-xナノプレートの電子状態の解明が進んだこと等,当初計画に無かった研究成果も得られたことによる。
平成30年度は,平成29年度に開始した,①もつれ合い忠実度の定量的な理論解析,②窒素等電子トラップに捕捉された励起子の安定化,および,③電流励起単一光子・もつれ合い光子対発生の検討をさらに進める。
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