研究課題/領域番号 |
16H02206
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
求 幸年 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40323274)
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研究分担者 |
紙屋 佳知 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 基礎科学特別研究員 (20732382)
那須 譲治 東京工業大学, 理学院, 助教 (40610639)
加藤 康之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50708534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁性 / 強相関電子系 / 物性理論 / 計算物理 / トポロジー |
研究実績の概要 |
研究計画に沿って研究を推進し、以下の研究成果を得た。(1) 計算機環境の構築:本研究計画をスムーズに遂行するために、新しい計算機システムを導入し、代表者と分担者で共有して使用できる計算機環境を構築した。(2) 計算プログラムの開発・整備:これまで用いてきた量子モンテカルロ法において、律速であった厳密対角化の部分にグリーン関数法と多項式展開法を導入した新しいモンテカルロ法を開発した。(3) 3次元ハイパーオクタゴン格子上のキタエフ模型の計算:(2)で開発した新しい手法を3次元ハイパーオクタゴン格子上のキタエフ模型に適用して、量子スピン液体と常磁性状態の間に有限温度相転移が生じることを明らかにした。また、この相転移が先行研究で見出されていた3次元ハイパーハニカム格子モデルにおけるものと同様の機構によることを示した。さらに、両者の場合に相転移温度を比較することで、基底状態におけるフラックスギャップとの相関を明らかにした。(4) 3次元ハイパーハニカム格子上のキタエフ模型におけるスピンダイナミクス:クラスター動的平均場法あるいは量子モンテカルロ法と連続時間量子モンテカルロ法を組みわせた計算により、3次元キタエフ模型のスピンダイナミクスの温度変化を初めて明らかにした。(5) キタエフ-イジング模型における"液-液"転移:キタエフ模型にイジング相互作用を導入したモデルに対して、マヨラナフェルミオン平均場近似・厳密対角化・有効模型解析を相補的に組み合わせた研究を行い、キタエフ量子スピン液体とネマチック的な量子無秩序状態との間に1次相転移が生じることを見出した。さらに、有限温度において1次転移線は臨界点で終端し、2つの液体状態が、スピンが分数化した常磁性領域を通じて連続的につながっていることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた研究内容について着実に成果が得られている(上記「研究実績の概要の(1)-(4))にとどまらず、新しい拡張キタエフ模型に対して、いくつかの異なる計算手法を相補的に組み合わせた計算を行い、量子スピン系における"液-液"転移とも呼べる相転移の性質を初めて詳細に明らかに認め(「研究実績の概要の(5))。また、これらの研究成果に関して、学術論文を発表するだけでなく、国内外の学会や国際会議等において精力的な成果発表を行い、そこでの参加者との積極的な議論を通じて、さらに新しい研究展開にもつながっているため。特に、「固体物理」において誌上セミナー「量子スピン液体研究の最前線」という連載記事の執筆も開始したため(第1回は2017年4月号に掲載)。また、本研究課題専用のWebページを開設し、研究内容や研究成果を周知しているため。さらに、計画にはなかったこととして、2016年7月14日, 15日に、国内の研究者を集めて「第一回 量子スピン液体研究の新展開」と題した研究会を行い、活発な議論を行うことで、実験・理論の緊密なネットワーク形成と新しい課題の発掘を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの順調な研究の進捗を踏まえて、予定通り平成29年度の研究計画を遂行する。その一部は前倒して得ることができているため、さらに積極的な研究を先取りして遂行する。また、学会や国際会議等の参加者との議論を通じてさらに新しい問題も着想しているため、それらについても発展・進化を図る。
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