研究課題
トポロジカル反強磁性体の候補物質であるパイロクロア型イリジウム酸化物の薄膜作製を行った。特にLuttinger Semimetalとして知られているPr2Ir2O7のエピタキシャル薄膜の作製に世界で初めて成功した。その結果、基盤として使っているYSZにその格子定数がロックされ[111]方向に引っ張り応力のかかった薄膜とロックされておらず応力のかかっていない部分が混在した薄膜が混在していることが分かった。さらに、詳細な実験を進めた結果、このPr2Ir2O7薄膜が磁化を伴わずに自発的な異常ホール効果をゼロ磁場で30 K以下で発現することがわかった。このことは、歪を受けている薄膜部分においてall-in all-out型の5d電子の磁気秩序が現れており、その結果として磁気ワイル半金属状態になっている可能性を明らかにした。すなわち、当初の研究計画にあったNd2Ir2O7で実現する5d電子に基づくall-in all-out状態とそれが作るワイル半金属電子状態をPr2Ir2O7の薄膜において実現することに成功した可能性が高い。また、共同研究からラッティンジャー半金属状態の性質として、動的な誘電率が非常におおきく増強していることも明らかにした。一方、角度分解光電子分光は、トポロジカル物性を司る電子構造の直接観察を可能とする強力な実験手法であるが、我々はこの手法を用いて、世界初となる時間反転対称性の破れに起因するワイル粒子を反強磁性体金属のMn3Snで実証した。いずれも、トポロジカル反強磁性体の存在を世界で初めて実証した重要な成果である。
1: 当初の計画以上に進展している
物性科学で現在最も急速な進展を見せるトポロジカル物性分野において、磁性ワイル粒子は長らくその検出が待ち望まれていた固体内素励起であり、それを成功させた本研究が領域内外に与えるインパクトは大きいものとの自己判断に基づく。
当初の研究計画にあったNd2Ir2O7で実現する5d電子に基づくall-in all-out状態とそれが作るワイル半金属電子状態をPr2Ir2O7の薄膜において実現することに成功した可能性が高い。今後は、そのことをより明確に実証するために、このPr2Ir2O7の薄膜の持つ低温状態の詳細を磁気抵抗やホール効果により詳細に調べる。また、トポロジカル磁性物質のより微細な固体内素励起の検出を可能とするため、光電子分光装置の高度化を進める。また、試料作成グループとの連携を深め、表面敏感な光電子分光に耐えうる試料準備条件の最適化を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 6件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (88件) (うち国際学会 30件、 招待講演 23件) 備考 (2件)
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