4年計画の4年目(令和元年度)は、平成30年度までに得られた±3次までを含めた高次誘導ラマン散乱光発生の任意操作の実験を継続して系統的に進めた。すべての次数への変換と操作に関して信頼に足る詳細な実験データを取得することができた。それをもとに、対応する数値計算実験をおこない、実際の振る舞いが数値計算によってどの程度再現されるのかについて、関連する主要なパラメーターを網羅的に操作しながら解析をおこなった。実験で観測された特徴的な振舞いが、定量性をもって良く再現されることを確認することができた。一方、特定の次数に出力を集中させた結果については、当初、期待された100%に近い量子効率を実現するには到らなかった。数値計算の定量性を確立した後にこの点について解析を進め、位相操作をおこなう相互作用長の自由度を実験では組込めていないことと、用いるレーザー光の断面内の空間分布にその主な要因があることが明らかになった。これらは、技術的に十分解決可能な問題で、この結果をもとに、今後、次のステップに向けてプロジェクト研究を発展させていく土台を作ることができた。得られた結果は、国際会議に投稿し発表予定である。また、論文発表に向けて準備中である。また、これらの研究と並行して、実際に、真空紫外域における高効率波長変換をおこなうことを目指し、その基本波となる紫外光源の高効率発生の研究を進めた。通常の非線形光学結晶を用いた二倍波、および三倍波の発生法にもとづいているが、高次誘導ラマン散乱光発生に用いた位相操作の物理をこの過程にも組込むことで、80%を超える効率の波長変換を実現した。真空紫外域における単一周波数波長可変レーザーの実現に向けて重要な土台をつくることができた。
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