研究課題/領域番号 |
16H02214
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井元 信之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00313479)
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研究分担者 |
早坂 和弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所量子ICT先端開発センター, 研究マネージャー (10359086)
三木 茂人 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (30398424)
山本 俊 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10403130)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子情報 / 量子情報処理 / 量子エレクトロニクス / 量子光学 / 超伝導光子検出器 / イオントラップ / 量子測定 / 弱値 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで光量子測定で行われてきたものとは異なる、新しい機能をもつ量子測定を非従来型量子測定と位置 づけ、これを用いた新奇多体量子システムを構築することを目的に研究を行っている。これは大きく分けて二つあり、1つは (1) 従来通信波長で動作することができなかった量子系に対して、通信波長での動作を保証する量子操作および量子測定である。もう一つは (2) 初期状態を与えてその後の発展と物理量の期待値を算出するという通常の量子力学と異なり、初期状態(事前条件)とは無関係の測定を事後にも行い、得られた結果を事後条件とした期待値の算出をするといういわゆる「弱値」の有用性を追求するものである。平成29年度の実績は次の通りである。
[異周波数量子測定による異原子量子システム]単一Ca+からの866nm単一光子を光通信波長帯へ高効率に変換する量子周波数変換器を光共振器と結合したトラップイオンに結合させた。これにより、トラップイオンからの単一光子を1530nmへ変換し単一光子性を保っていることを確認した。 [ 超高速量子測定による光量子システム]既存超伝導光子検出器(SNSPD,80ps時間分解能)を用いた非同期光源による量子テレポーテーション実験および多体エンタングルメント状態であるGHZ状態の生成を行い、論文掲載にこぎつけた。また、超伝導単一時速量子回路によるSSPD用低ジッタ信号処理回路の設計・開発および動作を実証した。これについては論文投稿を予定している。[初期条件及び終条件を束縛した系の量子測定の特異性を利用した新奇量子システム] 粒子(具体的には一つの光子)がある経路をとる確率に相当する「弱値」がマイナス1となる特異な系を構築し、その経路に挿入した「操作」(具体的には偏光回転)が逆符号となることを実験で示した。現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に記すように、計画以上に進展している部分、概ね順調に進展している部分、やや送れている部分が混在しているが、全体としては概ね順調(+僅かに計画以上)と考えられるので、(2)概ね順調 とした。
[異周波数量子測定による異原子量子システム]上記研究実績の概要に記したH29年度の結果により、開発したシステムの有効性を確かめることができた点は順調である。一方で量子状態の保持に関しては未だ実現しておらず、当初計画より若干遅れている。 [超高速量子測定による光量子システム]研究実績の概要に記した結果は当初予定通り+αと考えている。(+αはGHZ状態生成の部分および論文掲載に至った点。) [初期条件及び終条件を束縛した系における量子測定の特異性を利用した新奇量子システム] 研究実績の概要に記した結果はまさに当初予定の通りである。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の研究実績、および計画以上の点や反省点を踏まえ、最終(H30)年度は次のような推進方策をもって進める。
[異周波数量子測定による異原子量子システム]単一Ca+トラップからの波長866nmの量子状態観測に向けて、可搬型Ca+イオントラップを阪大グループに持ち込み、光通信波長帯へ変換する実験を実施する。 [超高速量子測定による光量子システム] 新型の超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)に関しては、NICTで開発した2光子検出SNSPDを阪大量子光学グループに持ち込み、2光子干渉観測を実施する。 [初期条件及び終条件を束縛した系における量子測定の特異性を利用した新奇量子システム] まず前年度の成果である「マイナス1の弱値を示す経路に置いたユニタリ操作が符号反転して働くことの実証実験」が投稿中の状態であるが、これを論文化にこぎ着けることを第一の目標とする。平行して、「ユニタリ操作だけでなく散逸までも打ち消す」実験のアイデアがあるので、この実証実験を検討する。
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