研究課題
理論と実験の協力により、柔らかいダイナミックな構造変化を伴いながら高い機能を発揮する、ソフトマシンとしてのタンパク質の動作原理を探るため、今年度は以下のような研究を行った。1)アロステリック構造転移を記述する粗視化動力学モデルの整備を進めた。2)時計タンパク質であるKaiABC系に構造転移理論を適用し、転移の柔らかいダイナミクスがKaiABC系の安定な概日振動をもたらす機構について仮説を提案した。3)ミオシンVIのアクチン繊維上の運動を記述する動的ランドスケープ理論を展開し、ミオシンVIが長距離のステップ歩行をするために必要な分子構造条件を理論的に明らかにした。4)核内のタンパク質とクロマチンの相互作用をモデル化し、クロマチン運動を解析した。5)アルカン合成酵素(アルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼ、ADO)とジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の動的ランドスケープを特徴づけるために、複数の緩和時間を測るマルチスケールNMR測定を行った。ADOについては分子動力学シミュレーションを行い、実験と理論の結果を比較検討した。6)構造揺らぎを制御することで酵素活性を制御する新しいタンパク質工学技術の開拓を目指した研究を行った。ADOとDHFRの動的ランドスケープについての知見を用いることにより、酵素活性を向上させた変異体の創出に成功した。7)動的エネルギーランドスケープを理論的に描くことのできるWSMEモデルの改良を行った。8)そのほか、様々なタンパク質の構造ダイナミクスの測定や、機能を向上させるためのタンパク質デザインを行った。こうして、粗視化モデル、統計力学的モデル、マルチスケールNMR 測定、網羅的変異解析など革新的な手法を総合して、タンパク質の構造変化を支配する動的エネルギーランドスケープを解析し、タンパク質の運動と機能、およびタンパク質工学技術について研究を行った。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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