研究課題
本申請では、出芽酵母やバクテリアの三次元構造を、ありのまで、光学顕微鏡の分解能を越える解像度で三次元的に可視化することを目指している。平成29年度にSACLAで収集した酵母核、シアノバクテリアの回折パターンを吟味したところ、データ処理プログラムで二台の検出器データを統合する部分にバグが見つかった。これを修正してデータ処理をやり直し、データ処理システムが提示した良好なパターン約1万枚から、それぞれの細胞周期について、回折パターンのvisibilityが優れ、50 nm以上の分解能を示すパターンについて位相回復計算を行った。これにより、前年度よりも確度の高い細胞核サイズ分布、核酸集積体と解釈される高電子密度領域のサイズ分布が得られ、現在、論文投稿準備中である。シアノバクテリアについては、回折パターンを吟味した後に位相回復計算を継続中である。さらに、標準試料として用いている酸化銅粒子の成長過程について、多様体解析に基づく論文報告を行ない、今後、多様体解析を生体粒子に適用するための解析基盤を構築した。平成30年度は、低温トモグラフィー実験を、SPring-8のBL29XUにおいて三回実施した。実験装置及びこれまでのデータ収集、放射線損傷限界等について詳しく論文として報告した。実験毎に装置制御プログラムのアップグレードを行うとともに、試料設置用窒化珪素薄膜についても加工を行った。SPring-8光学系チームと連携し、一週間のビームタイムで、コヒーレントビームの位置安定性が担保された。これまでに、G2/M期の細胞について、トモグラフィー実験でのデータ収集角度ステップ1°、角度範囲±80°のデータを50 nm分解能まで収集し、三次元再構成によって、その姿を描き出すことに成功している。今後、電子密度の精密化方法などを検討することで、より詳細な電子密度が得られるものと期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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